常に“自分”を持っている

 ドラマでは夏帆が演じ、ドラマチックなその半生をエッセイという形で“拾った”担当編集者の浅井茉莉子さんは、松尾との出会いをこう語る。

「共通の知人である樋口真嗣監督の会で会いました。松尾さんの記憶では私が頼んだことになっているのですが、私は松尾さんが“何か書きたい”とおっしゃったと記憶しています。その後いただいた原稿が面白かったので、ウェブサイトでの連載を提案したところ快諾してくれました」

 松尾が引き寄せるのは運だけではないようだ。

「相手の職業は関係なく、子どもから大人まで誰にでも分け隔てなく、親しみを持って話してくれるんですよね。そんなキャラクターだからこそ、いろんな人を巻き込んで、盛り上げていくことができる。連載中から“ドラマになったらいいね”と話していましたが、実現したのは松尾さんの引き寄せる力あってこそだと思います」(浅井さん)

 その“愛され力”は学生時代から発揮されていた。高校時代の担任だった白川淳哉先生が振り返る。

『拾われた男』の表紙。絵も松尾諭が手がけた(表紙をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします)
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「人とのつながりを大切にしていて、いつも明るい雰囲気で笑顔が多かったです。俳優として“三枚目”的な印象がありますが、高校生のときから変わっていませんね」

 その強運もあり、俳優になる夢をつかみ取ったが、高校の同級生で、ラグビー部に所属していた中井健二さんは、

「試合では相手チームに対して身体を張ってタックルにいくなど貢献していました。周囲の期待を裏切らず、困難にも踏ん張ることができるタイプなので、みんな信頼していました」

 同じく、高校時代に担任だった井上宏先生も「人に合わせるのではなく、常に“自分”を持っています。『拾われた男』も“あの高校生がこんなふうに成長したんだ”と面白く読ませてもらいました」と、恩師や同級生も松尾の人となりを絶賛。

 誰からも愛される人間力と強い信念を持っていたからこそ、その才能がきちんと“拾われた”のかも!