100円ショップを訪れると目に入る、300円、500円、はたまた1000円(!)の品々。店舗によっては“おすすめ商品”のごとく最前列に陳列されているが、一体、いつから“100均”ではなくなったのか。
「もともと100円ではない商品は少しずつ販売されていましたが、商品展開が活発になったのは、コロナ禍に入った'20年から。この1~2年で驚くほど高価格帯の商品数が増えました」
そう話すのは、週3回は100円ショップを訪れている“100均マニア”の佐々木舞さん。特に、“おうち時間や在宅ワークの環境を気軽に、安く充実させたい”というニーズの高まりを受け、キッチングッズ、キャンプグッズ、PC・スマホ周辺に使うガジェット類が爆発的に増加していると教えてくれた。
“ちょっと高級なものが買えた”という心理に
実際、100円ショップの1人当たりの消費額は年々右肩上がりに上昇。アイテム単価の値上がりも背景にあると考えられる。でも、正直“100円じゃない”価格をお高く感じることも。
「確かに、以前は“高い! 100均じゃないのか!”とネガティブな意見も多かったですね(笑)。でも、専門店や家電量販店で数千~1万円で買わなければならなかったアイテムを300~1000円程度で買えるメリットは大きい。今は“むしろ安い”と感じる人が増えています」(佐々木さん、以下同)
クオリティーも折り紙つき。実は、半信半疑で100円ショップの高額アイテムを購入したキャンパーやガジェットマニアたちがSNSなどで高評価レビューを発信しており、それもヒットの要因になっているのだ。
「これまでも100円という安価であれだけ便利で多様なアイテムを展開してきた100円ショップですから、数倍の予算をかけて作れば……は、言わずもがな。最近は、100円じゃない商品を狙って100円ショップを訪れる人もいるほどです」
生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんもクオリティーの高い商品だからこそ、今の消費傾向にマッチし、ヒットにつながったと分析する。
「今、コロナ禍前からの“リキッド消費”(サブスクリプションサービス等を使ってなるべく物を持たない消費スタイル)に加え、SDGs的視点を持った消費がトレンド。不要な物は買わないで、今までよりやや高いものを長期的に使おうという消費者がますます増えています。100円ショップでも、300円、500円といった少し高めで品質のよい商品に手が伸びるのはそういう意識の働きがあると考えます」(柏木さん)
さらに、昨今の物価高で高額の買い物がしにくいなか、300~1000円程度という値段も“ちょっと高級なものが買えた”という心理にしてくれるちょうどよい価格帯だと指摘する。
「100円ばかりが並ぶお店だからこそ、200円、300円のものも高額感があり満足感が得られるのです。物価上昇中で、安易に高級なものが買えない今、安く満足感を満たしてくれる100円ショップの高額アイテムは選ばれ続けるでしょう」(柏木さん)
このところ売り場では、夏に向けて首にかけるポータブル扇風機『ネックファン』(1320円)や、『保冷剤ポケット付きミニ扇風機』(550円)など、暑さをしのぎ、快適に過ごすための高額アイテムも充実。すでに品薄状態のものも。季節ものの展開はクオリティーも高く、マニアのチェックアイテムだ。
「高額アイテムにはお店側の相応の覚悟とこだわりを感じます。値段以上の満足感が得られると思いますよ」(佐々木さん)