「基本的に周囲の人は織田さんのMCぶりを褒めてくれるじゃないですか。山本高広さんにマネされて、多少はイヤだったかもしれませんが(笑)、何回も続けているということは、本人も世間の評判も悪くないのだろうと思いますよね。
陸連と織田さんサイドの間に入ったTBSも“そろそろ、落ち着いたトーンの実況もいいと思います”といった説得をしたのではないでしょうか。ただ、織田さん本人は“言葉の魔術師”のようにコメントができる人ではないので、限界がきちゃったのかなと。それが2015年の女子100m決勝に出場した、ジャマイカのシェリー・アン選手に対する『アニメのラムちゃんを思い出すなぁ……』のコメントになったのでは」
シェリー・アン選手はこのとき、髪の毛を緑色に染めた姿を見せていた。織田は、アニメ『うる星やつら』のヒロインと重ね合わせたのだ。
「この辺りは、本人も熱いボルテージが下がってしまって、なんとなくMCが“接待”になってしまっている気がします」
織田のバトンを受け取るMC
さて、織田が去った後の『世界陸上』だが、宝泉氏はバトンを渡す次のMCについてこう語る。
「難しいでしょうね。1度くらいならやっても、と思う人はいるかもしれない。これまでは織田裕二さんという存在が、テレビ的な意味では1人で番組を背負ってきたと思います。彼がいなくなると、これからの『世界陸上』を放送するTBSはツラいと思いますよ」
16日から10日間、織田裕二の“ラストショー”が始まる。今回、宝泉氏はどんなことを彼に期待するのか?
「感涙にむせぶ、なんて場面があって欲しいですね。ただ今回、アスリートの中に視聴者やMCを魅了する“物語”を持った人がいるのか……。
スポーツの感動は、アスリートが背負った物語から発生するので、そういう流れがないと盛り上がらないですよね」
確かに、日本人で金メダル候補といえるアスリートは報じられていない。もしかしたら、25年のMC人生に幕を下ろす、織田自身の“物語”が涙を呼ぶことになるのかもーー。
取材・文/蒔田稔