いじめの延長で受けた性暴力
安田徹さん(仮名=40代)は5年ほど前から、性別や性的指向を問わない性被害について、当事者の話を聞く勉強会を重ねている。男性の参加者も多く、会はすでに20回を数える。
厚労省が実態調査をすることについて、安田さんはこう話す。
「正直、すごく遅いなと思っています。17年の刑法改正のときに、強姦罪から強制性交等罪となり、被害対象に男性も含まれました。そのときに調査してほしかったです。ただ、国もやっと重い腰を上げてくれたので、このきっかけを大切にしてほしい」
安田さんが被害に遭った場所も学校だった。小学生のときから高校生までいじめを受け、その延長で性被害に遭った。小学校高学年のとき、ズボンとパンツを脱がされた。
中学に進学してからも、小学校時代の加害者の大半が一緒。いじめは続き、ゴキブリや昆虫を食わされたり、便器に顔を押し付けられたりした。担任は気がつかないふりをして、止めようともしなかった。先輩からもいじめられた。
あるとき、男性の先輩の1人から呼び出された。
「2人きりの状況で、裸にされて、先輩の男性器を口に含まされ、首を絞めながらお尻をレイプされました。先輩が卒業するまで呼び出されました」(安田さん、以下同)
その後、被害はエスカレートしていく。教室内で自慰行為を強制された。加害者の女子生徒の1人が言い出したことで、集団リンチの中で自慰行為をさせられたこともある。
また、別の女子生徒の発案で、自慰行為中、男性器にカッターを突きつけられた。「早く射精しないと切り落とすよ」と笑っている姿は恐怖だったという。
「いじめ被害の自覚はあったので、いじめに関する集会やイベントで体験を話していました。21歳のときに、“それって性暴力じゃない?”と指摘する人が出てきました。そのため、自分は“性暴力の被害者”なんだと考えるようになったんです。そこで医療機関を勧められました」