「太賀」から「仲野太賀」へ改名した理由

 出演ドラマのタイトルの通り、仲野はゆとり世代(1987年から2003年ごろに生まれた人)。この世代は「組織への帰属意識が低い」など短所ばかり指摘されるが、「横のつながりを大切にする」などの長所も多い。俳優も例外ではないだろう。

 仲野が改名したのは2019年6月。「太賀」から「仲野太賀」にあらためた。本名が中野であるにもかかわらず仲野にした理由は、「仲間との出会いが俳優人生の財産だから」

 ちょっとキザにも聞こえるが、ゆとり世代らしい本音に違いない。一方、先に売れた菅田も仲間思いで、スタッフらに向かって「太賀はいい」と讃え続けていた。昭和期なら考えられなかっただろう。

 仲野の父親が『愛のいう名のもとに』(フジテレビ系、1972年) にチョロ役で登場した中野英雄(57)なのは知られている通り。今は仁侠もののVシネマ界の大御所だ。ヤクザの大親分をよく演じ、見た目は強面でコワイが、やはり仲野を支えた。

 仲野のドラマの放送が終わると、すぐに感想が書かれたメールが中野から来る。毎回、絶賛される。仲野によると「オレの話はするなと釘を刺しているのにSNSで(PRを)流す」(フジテレビ系『ボクらの時代』2021年11月7日放送)。

 迷惑そうな口ぶりだったが、顔は笑っていた。ありがたいと思っているのだろう。中野の愛情に恵まれたこともあって、仲野はいい奴に育った。

 ゆとり世代の代表格である仲野とその仲間たちが、これからのドラマ界、映画界をどう変えてゆくのか興味深い。

文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。