ボクシング人気が落とした“考えの古さ”
大嶋さんは前出のとおり、プロになる前に入れ墨を入れており、プロになるためには入れ墨を消さなければならなかった。皮膚を移植する6〜7時間にも及んだ手術で入れ墨を消した。それは“のたうち回りたい”ほどの痛みを伴うものだった。
「俺は(プロ試験を受けるうえで)前もってそう言われたから消した。(当時暴力団に所属いていた自分の入れ墨と異なり)別に今はファッションとして入れてる入れ墨だから、全然いいと思う。日本もやっぱり変えていかなくちゃなんないと思う。もう入れ墨があってもいいし、自由に好き勝手に、自分の身体なんだから。カッコよくて」
JBCが大嶋さんの入れ墨を拒んだのは'90年代のこと。'20年代に入ってもその規定は変わっていない。
日本では'90年代以降、『K-1』や総合格闘技など、さまざまな格闘技イベントが生まれた。そこには入れ墨のある選手もおり、亡くなった山本“KID”徳郁さんなどはその激しい格闘スタイルだけでなく、入れ墨を含めた“ファッション性”も人気の一因だったといえる。
「ボクシングの人気が落ちているのは、やっぱり演出もそうだし、考え方が古いのよ。変わらないと」
今回、入れ墨で物議を醸したのは井岡だけではない。対戦相手のニエテスにも腕や胸に入れ墨があった。しかし、ライバルはそれを隠しておらず、“不公平”という声が上がったのだ。
「海外で戦ってる選手が日本に来たからって、“日本はダメです”なんて言えない。そんな入れ墨が入った海外選手、いっぱいいるんだから。いつまでも古臭いことやってないで、そんな時代じゃないんだって」