女優・冨士眞奈美が語る、古今東西つれづれ話。今回はある流行作家との関係について。
「侮辱罪」なんて罪状が厳罰化されたそうだけど、実は私、かつて某女性週刊誌を訴えたことがある。
“冨士眞奈美、某流行作家と同棲中”なんて具合に書き立てられた。当時、私は20代の前半で独身、その人には妻子がいたから、世間的には不倫といわれる関係だった。
事実無根な流行作家との不倫騒動
実際のところは、私は若くてふわふわしていて恋愛気分だったから、彼に手紙ばかり書いていた。同棲なんかしていなかったし事実と違う。そこで私はその女性週刊誌に異議申し立てをするため、検察局に行ったというわけ。
といっても、事の発端は作家自身の告白だからややこしい。私が「NHK3人娘」の仲間だった小林千登勢とともに、取材を兼ねた2か月間のヨーロッパ旅行をしていたときのこと。彼が私との関係を週刊誌の記者に話してしまった。
それが記事になって過熱報道へと発展し、結婚するという事実無根な話になってしまった。当時は姉や弟と暮らしていて、家族を養っていた私はもうびっくり。
女性週刊誌に記事が載ったとき、同じ号に女優の伊藤牧子さんとの熱愛をバラされた(同じ俳優座養成所出身の)加藤剛さんに「一緒に訴えましょう!」と持ちかけたものの、剛さんは「私は結婚しますからいいです」との返事。本当に伊藤さんと結婚した剛さんは、ずっとまじめな人だったわ。
ある集まりでは、瀬戸内寂聴(当時は晴美)先生が寄ってきて、「ねえ、どうなのよどうだったのよ」と熱心に聞いてきた。なんでも瀬戸内先生は、誰それが恋愛してると聞くと、その当事者に聞き込むのがお好きだったみたい。
そんな瀬戸内先生のお相手として知られていた井上光晴先生とは、新宿二丁目にある棋士がよく集まるバーで何度かお会いしたことがある。「君に小説の書き方を教えてあげよう」と声をかけてくださったが、瀬戸内先生がどうしてこのお方が好きなのか、その魅力がさっぱりわからなかったなぁ。