当時は開発側にいたという八木野さん。プロジェクトの中心となり折り鶴を使った再生紙の開発に乗り出したが、その作業は想像以上に大変なものだった。

「千羽鶴は紙だけでなく留め具がついているので、まず紙とそれ以外のものを選別する作業に時間がかかりました。作ってくださった人がそれぞれ思いを込めて、金具だったり紐だったり、いろいろな材料を使っている。ひとつひとつ慎重にチェックしていく必要がありました」

千羽鶴を使用するメーカーの声

 ときには金具が取りきれず、作業がやり直しになってしまうことも。この選別作業には広島市内の福祉施設や作業所の方々にもお願いした。

「折り鶴プロジェクトは広島の人のためになれば、という思いで始まっているので、市内の福祉施設にお願いできればいちばんいいのではないかと。作業所には私も何度も足を運びましたし、皆さんのおかげでこんな紙ができたよ!と伝えに行くと、すごく喜んでいただけたのが印象的でした。私自身もお会いするのが、毎回楽しみでした」

 このころから八木野さんの再生紙への思い入れは、ひときわ強いものに。いよいよ紙に色をのせるという段階では、今度は折り鶴のカラーバリエーションの豊富さに悩まされることになる。

「赤、青、黄、緑の4色の紙にできたら、と最初は考えていたのですが、じゃあ紫や茶色の折り鶴はどうするの? と。赤い鶴だけ、青い鶴だけ、となると他のカラーの鶴が使えない。でもそれはこちらの事情ですから、色を区別せず、できるだけすべての折り鶴を使いたかった。そこでベースの紙の上に、折り鶴それぞれの色がちらばるようにしました。この再生紙の特色である小さな点々、このひとつひとつが折り鶴なんです」

 まさに、色とりどりの祈り─。「カラフルウイッシュR」はこうして誕生した。
折り鶴をちりばめているからこそ、同じ模様はひとつもないのがカラフルウイッシュRならでは。実はすでに、商品のパッケージや封筒、大手企業の名刺など、さまざまな製品に使われているのだ。

 実際に商品のパッケージとして使用している(株)生活の木のマーケティング・商品開発担当者はこう話す。

「企画商品(アロマストーン)に、食物残渣や陶器を再利用した素材を使っているため、パッケージにもエシカルの要素を取り入れたいと考え、メーカーさんよりご紹介いただきました。社会貢献ができる点と、カラフルで楽しさのある見栄えのよさが決め手となりました。パッケージの内側に採用しており、開けたときの華やかさにつながっています」