上半期ヒット曲がたくさんあった過去3年

  近年、毎年のように「最近は国民的ヒット曲が全然生まれない」と言われてきているが、昨年の『ドライフラワー』や『Butter』、そして鬼滅関連曲のように、サビや曲名でピンとくる曲は、それなりに生み出されている気がする。

 過去3年のBillboard上半期ベスト5は、以下のとおりだ。

<2021年>
1.『ドライフラワー』優里
2.『炎』LiSA
3.『Dynamite』BTS
4.『夜に駆ける』YOASOBI
5.『うっせぇわ』Ado

<2020年>
1.『Pretender』Official髭男dism
2.『I LOVE…』Official髭男dism
3.『白日』King Gnu
4.『紅蓮華』LiSA
5.『宿命』Official髭男dism

<2019年>
1.『Lemon』米津玄師
2.『マリーゴールド』あいみょん
3.『U.S.A.』DA PUMP
4.『今夜このまま』あいみょん
5.『Flamingo』米津玄師

ドラマや映画など、多くの主題歌を担当してきた“ヒゲダン”の愛称で知られるOfficial髭男dism('19年)撮影/伊藤和幸
ドラマや映画など、多くの主題歌を担当してきた“ヒゲダン”の愛称で知られるOfficial髭男dism('19年)撮影/伊藤和幸
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  楽曲の浸透度や捉え方は、人それぞれ異なるが「よく流れてたな」「よく耳にしたな」と思える曲は、過去数年を振り返ってみると上半期だけで複数存在していた。

「下半期も含め年間でみると、2019年はFoorinの『パプリカ』、20年には瑛人の『香水』などが出てきたりしていました。でも、やはり“誰もが知っているヒット曲”は上半期に出そろうことが多く、それが紅白歌合戦に直結してきています。そういう意味で今年は、まだそのようなヒット曲は出ていないように感じます」(同前)

 流行曲に限らず、国民的ヒットが生まれづらい背景には“趣味嗜好の細分化”が理由と言われているが、ある音楽ライターは「生活の中心がテレビや雑誌からスマホになったことで、より“個”の重視傾向は強まっています」という。

 つまり、これまでの対面での“つながる文化”よりも、SNSで“広がる文化”にシフトチェンジしているというわけだ。前出のライターが続ける。

「個人個人の好きなものをより濃く、深くという流れもあります。コロナ禍で“集まる”という機会も激減したことも、それを加速させたかもしれません。カラオケも大勢で盛り上がるより“ひとりカラオケ”の注目度が高く、動画サイトなどの“歌ってみた文化”の浸透などもあり、盛り上がり系のカラオケヒットも生まれにくい。

 誰もが口ずさめるよりも、個性強めな難易度高めの曲のほうが注目される流れもあります。リアルの仲間との流行り、街で流れている曲というよりも、自分のタイムライン上に出てくるものが馴染みになっていく。TikTokでみんなが使っているものが一番“いいもの”になっていく。今年はまだガツンとくる大きなものが見つかっていないということでしょう

 ドラマや映画がヒットしたからといって、それらの主題歌もヒットするとは限らない。CMきっかけも然り……。

 とはいえ、2022年はまだ3分の1残っている。「22年は◯◯の年だったな」という、思いもしないメガヒットがこの先登場する可能性を信じたい。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉