子ども夫婦に気を使うジジババの苦難

  かつて自分たちが子育てしていたころの常識が通じなくなっており、コミュニケーションも電話よりもLINEを好む若い世代。意思疎通に神経をすり減らすことも多い。

 例えば、幼児のお風呂や抱っこ、食べさせ方ひとつにしても情報は現代式にアップデートされている。ジジババが良かれと思ってしたことが、「今どきありえない!」と一蹴されてしまうことも。

 小さいときのは大変だけど、まだかわいい。もっと大変なのは大きくなってから、と語るのは70代後半のBさん。近くに住む息子夫婦は何かにつけて“食事がてら”、小学校高学年の子どもを連れて遊びにくる。

は大きくなるにつれ体力がつき力も強くなる。口も達者になればわがままも増え、行動範囲もどんどん広がっていき、実の親でさえ手に負えないほどになってきます。あり余る若さに対応できる体力はこちらにはありませんよ。

 お小遣いをあげるといっても、金額も大きくなってくるし。自分たちの残り時間を考えれば、にかけるお金より、夫婦でゆっくり温泉旅行にでも行きたい。とはいえ、コロナ禍だから自由がきかないんですけれどね」

 目下の悩みは、教育費の援助を頼まれやしないか、ということ。不景気の流れは子ども夫婦の家計にも及んでいるのは知っているが、医療費や介護費など自分たちの経済事情も不安でしかない。「ちゃんと年金がもらえる世代でうらやましい」と言われても、今の暮らしに余裕などない。

の世話が大変になっているのは、今の女性たちの晩婚化、そして出産が高齢化している、というのもあります。初の誕生が70代、2人目が70代後半となるケースもありますね。高齢出産している娘も体力的に厳しいけれど、自分たちも厳しい。みんなで右往左往しているうちに、関係がギクシャクしてしまうのです」(ぼうださん)

 さらに最近は超高齢社会化もあって、60代、70代のジジババ世代がその親である「ひいジジ、ひいババ」の介護をしていることも。正直、の世話どころではないだろう。

提供できる時間、資金に「限度」を

「パパママ世代と祖父母世代が、お互いに『できること・できないこと』『してほしいこと・してほしくないこと』を明確にし、共有しておくことが大切です」と、ぼうださんはコミュニケーションの重要性を繰り返す。

 例えば、今の子育て事情がわからないことを祖父母世代の責任とだけ考えるのは間違い。パパママ世代が昔の子育て事情を知らないことも同じように問題だ。「昔はこうだったけど、今はこうなっている」という両世代が相互理解に努めることが肝要。そのうえで干渉しない、頼りすぎない。きちんと話す、聞いてあげるのバランスをはかっていくのが望ましい。

「親子だからといって、何でも察してくれるわけではありません。大切なことは、しっかり言わなければ伝わりませんから」(ぼうださん)

 ジジババと、といえば今年6月に起きた事件は大きな波紋を呼んだ。2歳のを祖母と内縁の夫が室内に放置し、熱中症で死亡させてしまったのだ。保護責任者遺棄の疑いで逮捕された祖母は、「育児ストレスがたまっていた」と供述した。

「自分が知らないところで、何かの拍子にがいなくなってくれたら……」、そんな考えが頭をよぎりでもしたのだろうか。「目に入れても痛くない存在」とはいえ、疲れがたまってしまったら、誰しも追い詰められてしまう。

 世話を頼むほうも、頼まれるほうも適度な距離感をはかりながら、次世代の命を育みたい。