例えば廣出容疑者が時間をつくってライブに駆けつけた日、A子さんはSNSで、
《しょうくん!今日もライブ来てくれてありがとう もうさすがしょうくんよ!!!さすが××VIP》(××はA子さんの名前、編集部で一部変更)
とファンサービス。横領した金による“推し活動”とは知るはずもなく、素直に喜ぶA子さんをもっと喜ばせようと犯行を重ねたのか。名前を呼ばれたり、推しメンにVIP待遇されるのはさぞ嬉しかったに違いない。
A子さんのアイドルグループを運営する事務所に取材を申し込むと、
「その件ではコメントしないと決めているので、何も話せません」
ときっぱり。
アイドルに溺れた廣出容疑者とはどのような人物なのか。町役場の同僚は、
「周囲となじもうとせず、アイドル支援に人生をかけているようにみえた。自分が支えているという自負があったのではないか。職場の目を気にせず有給休暇をとって遠方のライブなどに出かけていたから、彼は有給取得率がきわめて高いんです」
いつも白いポロシャツ姿で…
と実生活を明かす。有給休暇取得は労働者の権利だから何の問題もないが、横領した金を自分に投資する様子はなかったという。
「いつも白いポロシャツ姿で、もう10年近く同じ小型車に乗っている。派手になったり無駄遣いするのは見たことがない。仕事の指示をすれば淡々とこなし、コミュニケーションを取ろうと話しかけても会話は続かない。無口でおとなしく地味な男です」
と病院スタッフ。自宅の近隣住民らによると、独身で実家暮らし。少年のころから目立たないタイプで異性関係は苦手だったという。
近所の住民は、
「本人は“一生かけても全額返金する”と役場に言っているそうだが、どうやって工面するつもりか。おかしな男ではなかったのに」
と言葉少なだった。同町によると、事件発覚後に返金されたのは約650万円だけ。過剰な疑似恋愛のあとに待つのはいばらの道だ。