親の歴史を見届けて…

 不要な家具や家電、布団なども自治体の有料回収を利用。結果、費用はトータル18万円程度と安く抑えられた。

「母が通っていたデイサービスに声をかけ、不要品をタダで引き取ってもらったことも。いちばんかかったのは、往復2万円近くの交通費です」

 片づけ終了まで実家の往復は15回に及んだ。手間と時間を費やし、1人でやり抜いたうきさん。一体どんな思いが?

「両親が何を大切に思って、この家で暮らしていたのかを知りたかったんです。業者に頼めば一気に片づきますが、心の整理はできません」

 全部見たからこそ、貴重な品々に出会えたという。

「例えば、母が父にあてたラブレター。母はよく手紙を書く人でしたから。かたや父は正反対の筆無精。そんな父が、家族にあてて書いた手紙が出てきたんです。入院中、病院のパンフレットに残したメモのようなもの。発見したときは夜中に号泣しました」

 うきさんにとって思い出の品にも巡り合えた。

「小学校時代に使っていた歴代のスクールバッグがそのひとつです。すべて母のお手製。どれもキレイな刺繍が施されていました。これら思い出の品と向き合い、自分が大切に育てられたことを実感できた。その気持ちのおかげで、母に寄り添うことができ、何でも許せたんだと思います」

服や小物を手作りしてくれた思い出が蘇る(ブログ「それでも実家は売れました~施設に入所した親の家の片づけと見守り介護日記~」より)
服や小物を手作りしてくれた思い出が蘇る(ブログ「それでも実家は売れました~施設に入所した親の家の片づけと見守り介護日記~」より)
【写真】押し入れには、10数組の布団が

 取材後、最愛の母を90歳で見送ったうきさん。

「母との思い出は、モノではなくいまも心の中にあります。ただ今回、父の遺品が全部残されていた。いま振り返ると、母が元気なうちに父の思い出話をしながら、一緒に片づけてあげたかったです」

うきさん
うきさん

うきさん
 関西在住の50代主婦。ブログ「それでも実家は売れました~施設に入所した親の家の片づけと見守り介護日記~」は、なぜか笑えてちょっと泣ける実家片づけ奮闘記。
https://ameblo.jp/brandnew-note/

取材・文/百瀬康司