テクニカルな採点、ガイドボーカルなど高機能システムの導入で
実際、'21年度のカラオケボックスランキングを見ると、若い世代の曲がずらりと並ぶ。
「YouTubeやTikTokなどSNSをきっかけにヒットした曲が目立ちますよね。Adoさんの『うっせぇわ』、優里さんの『ドライフラワー』、ちょっと前だと瑛人さんの『香水』もそう」
と話すのは、明石家さんまのものまねでおなじみのほいけんたさん。実はほいさん、カラオケ採点で100点を弾き出した回数がなんと1000回(!!)を超える、カラオケマニアでもある。
たしかに、歌ってみた動画の投稿がTikTokに相次いだことでブレイクした『ドライフラワー』など、最近の流行歌はテレビ発ではなく、SNS発が珍しくない。裏を返せば、“若者の〇〇離れ”といったワードが叫ばれがちな昨今にあって、カラオケに関しては若者離れが起きていないということ。むしろ、ランキングからもわかるように、若者がカラオケ市場を下支えしている感すらある。
歌われている人気曲について、ほいさんはこう見解を述べる。
「歌のうまい素人さんや、ファルセット(裏声)やミックスボイス(地声と裏声がまざったような声)を使いこなせる素人さんが増えた」
米津玄師やOfficial髭男dismなどが、ランクインしているというのは、その証左だろう。
「テクニカルな採点やガイドボーカルなど高機能のカラオケシステムの普及、また発声法の指南動画がYouTubeなどにアップされていることによって、歌のうまい若い人たちが増えていると感じます。素人とプロの違いというのが、昔よりも薄くなっている。ものまね番組やカラオケ番組でも、“YouTubeで人気の─”という人が増えているでしょ?」(ほいさん)
また、「ひとりカラオケが当たり前になったことも大きいと思う」と続ける。
「僕もひとりでフリータイムを活用して9時間ぐらい歌い続けるときがある(笑)。少し前までは、コミュニケーションとしてのカラオケが一般的だったけど、今は趣味や練習、自己満足としてひとりカラオケに行く人も多い」(ほいさん)
難しい曲を歌えるようになりたいから同じ曲を何度も入れる、あるいは誰もいないから好きな曲を繰り返し歌う。そうした動機が、ランキングに反映されているところもあるだろう。
「ランキングを見ていると、ストレスを発散したり、みんなで盛り上がる曲が少ないですよね。カラオケのあり方の変化を感じます」(ほいさん)
そうした変化の中でも『残酷な天使のテーゼ』が強いのは、発散したい、盛り上がりたい層の支持を得ているからかもしれない。