「パパ活」の拡大と狂乱

 水面下でそのような被害やトラブルが広がりつつも、近年の若者の貧困を背景にして、パパ活は驚くほどの広がりを見せた。筆者の個人的な感覚では、女子大生の10人に1人は経験があるのではないだろうか。それほどの広がりだ。

 パパ活専用のマッチングアプリは、完全に男性の買い手市場であり、登録するとたくさんの若い女性から「いいね」やメッセージが集まる。ごく普通の10代・20代の女性たちが自分を何とか「買ってもらおう」と、写真やプロフィールでさかんにアピールする狂乱ぶりだ。

 コロナ禍に入ってからは、ますますパパ活女子のすそ野が広がった。夜職の女性や風俗嬢、30代・40代の主婦、女子高生、果ては女子中学生までが、パパ活に参入するようになってきた。社会的にブームが広がったということもあるし、仕事やアルバイトが減り、金銭に困ったという背景もあるだろう。実際、「パパ活」が主な収入源という女性さえ、多くあらわれた。

 女子高生、女子中学生などの18歳未満の場合は、アプリには登録できないためTwitterを使用することが多い。実際、Twitterで「P募集 JK・JC限定」(Pはパパ活、JKは女子高生、JCは女子中学生の略称)などとツイートすれば、多くのアカウントからメッセージが届く。

 パパを募集する女子高校生・女子中学生を名乗るアカウントも多く、大抵の場合、千以上のパパ活男のフォロワーがついているほどである。

 今年5月に児童買春・ポルノ禁止法違反(買春)の疑いで警視庁高井戸署に逮捕された映像ディレクター大島潤容疑者は、「PJ募集アカウント」を作って女性を引っ掛けていた。あいみょんのライブDVDやOfficial髭男dism、高橋優のMV制作にも携わっていた有名ディレクターである。

「パパ活」にからむ犯罪の多発

 パパ活がここまで社会的に多くの層に広がれば、当然に犯罪も多くなる。実際に「パパ活」に関係する事件は、後を絶たない。

 2022年1月には、池袋のラブホテルの一室で24歳の女が82歳の男性をカッターナイフで殺害した事件が起き、「池袋パパ活殺人事件」として世間を騒がせた。女が男性の財布から金を盗もうとしてトラブルになったという。

 このほか、多くの若い女性を食い物にした卑劣な犯罪も多数起きている。

 2021年1月には東京都文京区の49歳の男がTwitterで知り合った10代の女性に睡眠薬を飲ませて乱暴したとして逮捕された。余罪は50件以上に上るという。

 また、2022年4月には、SNSで知り合った女子中学、高校生らを車に乗せ、「俺、ヤクザやねん」などと脅して乱暴した39歳の無職の男の初公判が開かれた。男は2015~2020年に滋賀県内で起こした8件の強制性交事件で起訴されている。

 これまで挙げたのは、特に凶悪な事件だけである。これ以外にもパパ活がらみの強制性交、薬物、脅迫、盗撮、盗難、詐欺などの事件は、毎月いくつも報道されており、とても把握しきれないほどだ。