意外に多い高年齢のトンデモ客

 もちろん、マナーを守って気持ちよく利用するユーザーがほとんどだ。ただし、泥酔してほかのグループの女性客に声をかけたり、テントサイトで嘔吐(おうと)をしたり、タバコの吸い殻がパンパンに詰まった空き缶を捨てて帰ったりという迷惑客は、意外にも高年齢の人に多い傾向が。

特にレイブ(一晩中音楽を流して騒ぐ野外イベント)感覚で騒いだり、飲酒・喫煙ルールを守らずにトラブルを起こしたりするのは、中高年層の割合が増えていますね。

 多少のヤンチャが許された昔のキャンプの記憶をそのまま引きずってきているのかなという気もします。最近のキャンプブームで来るビギナーと思われるお客さんのほうがよっぽどマナーをわきまえていますよ……」(矢部さん)

 近年はコロナ禍などの社会情勢もあり、空前のキャンプブームだといわれている。密を回避しながら楽しめるレジャーとしてもアウトドアは人気を集めているようだ。公益社団法人日本キャンプ協会で事務局長を務める依田智義さんは、この数年のキャンプ人気を次のように分析する。

「第一次キャンプブームといわれる1990年代に育った世代が結婚・出産を経て、今度は自分のお子さんを連れて一緒にアウトドアを楽しんでいるという好循環が起こっています。

 また、近年はSNSや動画投稿サイトなどで有名人や一般人がキャンプを楽しむ様子が広く拡散され、アウトドアを題材にしたアニメ・マンガ作品などの影響もあって、若年層の間でもキャンプ人気が高まっています」

 大阪税関のデータによると、テントの輸入額は2020年に過去最高を更新。'90年代のオートキャンプブームをはるかに上回る129億円以上という輸入金額に達しており、近年のキャンプブームを数字の面でも裏付けている。

 一方、ゴミの放置や騒音トラブル、利用者の迷惑駐車など、オーバーツーリズム(観光公害)の問題が深刻化していることは、キャンプブームの負の側面だ。

 
実際に2019年度末には、伊豆諸島の神津島の無料キャンプ場2か所がユーザーのマナー違反の影響を受けて閉鎖される事態となった。このような状況を受け、公営のキャンプ場を管理する自治体やアウトドア用品の企業などは、キャンプマナー向上のために試行錯誤を繰り返している。