「世帯分離=親子の縁を切る」ではない

 その際のありがちなトラブルとして、親が嫌がるケースがある。

「世帯分離をよく知らないと、『親子の縁を切ろうとしている』と思われてしまうのです。でも、住民票を別にするだけで、戸籍とはまったく関係ありません」

 こんな誤解もあるという。

「世帯が別になると、親を養っているときに受けられる扶養控除が認められなくなるという情報もインターネット上にありますが、そんなことはありません。世帯分離はあくまでも『住民票での世帯を分ける』というだけで、扶養控除とは関係ありません。いままでどおり受けられます」

 そして、もっとも大切なのは、親自身が、子どもと生計を別にして、介護保険料や介護費用を自分のお金で負担したいと望んでいるかどうかということ。というのも、世帯分離は本来、社会的保護を受けなくては生活が立ち行かなくなる人を守るための手段で、介護費用を節約するためのものではない。

「そのため、介護費用の節約のためだけに世帯分離をするのだと、市役所の窓口で受け付けてもらえないことも。世帯分離をするときは、家族でよく話し合って」

世帯分離する前

 親と子を同じ世帯にしておくと、親の「世帯の所得」が上がる。つまり、所得が多いと認定され、本来受け取れるはずの支援を手放すことに。その結果、介護費用が家計を圧迫してしまう。

世帯分離すると…

 親との子の世帯を分けると、「親世帯の所得」が低くなるため、国からの補助が受けられて、介護費用の節約に。住民票を分けるといっても、同居のままでOK。