「締め付けを厳しくするとアングラ化してしまうというのは米禁酒法の時代から繰り返されている。社会のグレーゾーンの制度設計って難しいのだなあとあらためて。」
(Twitterより)
『「当事者」の時代』(光文社新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)などの著書で知られるジャーナリスト、佐々木俊尚さんの「AV新法」をめぐるTwitter投稿である(9月15日付)。さすが佐々木さんらしい箴言だ。
2022年6月22日、通称「AV新法」が公布された(「AV出演被害防止・救済法」などともいう)。AV(アダルトビデオ)に特化した、日本で初めての法律である。AV出演被害に焦点を当て、AVプロダクション(事務所)やAVメーカーの営業活動を大きく規制する法律となっている。
与野党の議員が超党派で4月から議論を開始し、1か月後には条文案が公表され、通常国会最終日の6月15日に可決成立という異例のスピードでの法制化だった。
「AV新法」の出演被害者救済という目的はよいだろう。しかし現場のヒアリングが不十分で、「AVは悪」という決めつけとAV業界への偏見で推進されたように思えるこの法律が、AVをめぐるダークサイド(闇)を拡大させている。6月23日の施行から約3か月が経った「AV新法」を巡り現場では嘆きの声が。
「AV新法」で苦しむ女優たち──職業女優が無視された
「AV新法」の問題点の一つは、職業としてAV女優を選んだ女性について考慮していない点である。
「私、騙されて出てる訳じゃないんですけどって思いました(笑)。なんかニュースを見ると、AVが悪者で、AVなんて出るもんじゃなくて、出ている子は騙されているか、お金に困って仕方なく出ている『かわいそうな人』という扱いに違和感を覚えます。いろいろな事情で不本意に出演したり出演した後で後悔したりする子もいますが、職業としてAV女優を選んで、プロ意識をもって活動している先輩もたくさんいるのに、無視されているなと感じました」
彼女は、27歳(仮名:Aさん)。音楽関係でフリーランスとして働きながら、副業でAVにも出演している。単体作品は少なく、企画モノの出演がほとんどで、月2、3本の仕事を受けている。3年前にAVプロダクションのWebサイトを見て募集を知り、自ら応募したのがきっかけだ。知的で清楚な雰囲気の美人である。
「学生時代から真面目でしたが、AVがすごく好きで高校生のときから観ていました。24歳で音楽関係の会社を辞めてフリーランスになったんですけど、収入が不安定で。いろいろ副業を考えて、AV女優もいいかなと(笑)。でも、AV新法騒ぎのせいで、いろいろキャンセルになってしまって7月から現在まで仕事がありません。AVの収入も当てにしていたので、すごく困っています」
同様の声は、多くのAV女優が発している。例えば、金苗希実さんの次のツイートは、6万件のいいねと、2万件のリツイート(9月29日)を集めた。
「7月決まってたAVの撮影が全部中止…AV新法で女優が守られるどころか仕事が無くなって現役の女優たちが苦しむ構図って誰得なん。。」
(Twitterより)