AV出演被害の実態と「出演意思」のグレーゾーン「乗せられた」と思う子も
「AV新法」成立のきっかけとなった「高校生AV出演解禁を止めて」の国会内集会を主催したNPO法人PAPS(ぱっぷす)のWebサイトには次のような被害例が掲載されている。PAPSは、「ポルノ被害と性暴力を考える会」から発展した団体で、リベンジポルノ、意に反したグラビアやヌード撮影などのデジタル性暴力、AV業界や性産業に関わって困っている人の相談に対応し、性的搾取の根絶のために活動している。
Cさんのケース
プロダクションの人にスカウトされて、断りきれずに撮影に応じてしまいました。初めは普通のV(ビデオ撮影)でしたが、6本目から怪しい会社のビデオに出演させられて、廃墟のような場所で20人近くの人に中出しされました。怖かったです。とても悔しかったです。「もう消えてしまいたい」という気持ちでいっぱいです。
Dさんのケース
私は駅でスカウトされました。知らないうちにいろいろなことが決められて12本契約してAVに出演しました。大々的に販売されてしまったので、ついには高校の同級生にも知られてしまいました。AVメーカーの人に相談しても何もしてくれません。他の人からみれば、自ら望んでAVに出演してしまったかのように見えてしまいます。もう販売されていて、どうしたらいいか、わからくなりました。
(NPO法人PAPS:被害にあわれた方へhttps://www.paps.jp/av)
実際に、不本意な出演というのはあるのだろうか。元スカウトのEさんがスカウト活動の実態を話してくれた。
「2014年くらいに職業安定法と迷惑防止条例で路上スカウト規制が強化されてから、大っぴらにスカウト活動がしにくくなりましたけど、いくらでも手はある。まずナンパして友達になっておいて、お金に困ってると分かったら話を持っていくみたいな感じ。あと、彼氏に振られた、仕事を辞めたとかのタイミングを狙うとか。その辺は阿吽の呼吸です。『やってみれば』『女優として大切にされてファンもつくよ』みたいに軽く勧める。プロダクションに一緒に行くこともありますね。ただし最近は、AVが好き、AV女優に憧れる子も多くて、自分から乗って来るという子も非常に多い」
ただし、新人のデビュー作の場合、「出演の意思」が脆弱なケースもあるという。
「最近は、自分で直接プロダクションに応募する子も多いんですけど、勢いで出演したり、自暴自棄になって出演して、あとで気が変わって後悔するなんてケースも、ままありますね。だから、4か月ルールと、1年以内の契約破棄はきついと思いますよ。この辺はすごくグレーで、スカウトしてプロダクションに繋いだあと、『乗せられた』と思う子もいるだろうし、言いたくないけど、自分の黒歴史を消すため、あるいは様々な理由から『被害者』になる子もいる。もちろん、家族バレ、学校・職場バレして意思を変える場合もあるし、本当、いろいろです」(元スカウト・Eさん)
2016年にあるAV女優による「出演強要」の告発
2016年にあるAV女優の「出演を強要された」といった告発が発展し、当時大手のAVプロダクションの元社長が労働者派遣法違反容疑で逮捕された。
告発した女優は何本も出ているベテランで、何らかの意図をもつ告発ではないかと様々な憶測が飛び交った。
AVメーカー社員のBさんによれば、この事件が大きな社会問題となるまでは、不本意なAV出演というケースもあったという。
「一度、結んだ契約をたてにというケース、撮影内容をきちんと説明しないケースはありました。しかし、AV業界は2017年以降、自主規制の努力を重ねてきて、AV女優の人権を保護し、出演の意思確認や適正な契約、説明が行われているかをチェックするAV人権倫理機構が設立されたり、適正な制作過程で作られたAVを認証する『適正AV』などの取り組みが進められています。実際、AV新法にある多くの内容は、すでに現場で行われています。PAPSにあげられたような例は、一部の悪質なプロダクションやメーカーを除き、2017年以降は非常に少ないのではないでしょうか」(AVメーカー社員のBさん)