食材で買うものは、ショウガとにんにく。ほかはほとんど買わないという。

「自分のところでとれるものにも限界があるので買うこともあったんですけど、地元の方からいただいたりもするので。食べ物を無駄にしないように気をつけてます」

 珍しいところでは、ヘビや昆虫も。

ヘビは丸焼きにしたり、揚げたり、スープにしたり。うまいです。昆虫では蜂の子はもちろんですが、割った薪から出てくるテッポウムシはいって食べるとおいしいです。昔の子どものおやつだったそうです」

 都会では想像できないような、ワイルドな暮らしぶりだ。

生き生きとした山男の横顔があった

「山のものって無駄がないんです」

 生き生きと語るたくましい山の男の横顔に、素の彼が垣間見えた。

冬に向けての準備は、ひたすら薪作り。そして、建てている小屋をなるべく早く完成させて、薪ストーブを入れようと思っています。今のところは密閉性がないので冬はけっこうしんどいんですよね」

 またお風呂は山を下ったところにある温泉に行っているが、五右衛門風呂を作る予定だという。

「最高だと思うんです。山の稜線が魅力的なので、見られるところに作りたいなと。でも冬はけっこう薪を使うから2日に1回くらいしか沸かせないかな」

 と、思案していると、「あ! 水がダメだ!」と苦笑い。

山から引いている水が凍結しちゃうんです。風呂用の水を川までくみに行ったら、何往復も必要で5時間くらいかかっちゃう(笑)」

 寒い中の水くみも大変そう。

手はしびれます。でも山を歩くのは大変じゃないですよ。猟師は山の斜面を歩けないと、って狩猟の師匠や先輩方もおっしゃっているし、鍛えるために必要なこと。薪割りとか、日常での動きも全部、いい猟師になるためだったりするんですよね」

 猟期は冬なので、これまでも山の冬は経験してきた。だが、

“自分の住んでいるところに帰る”と、しっかり明言できるようになったのは、今年の春からだと思う

 “帰る家”としての山小屋で、これからさらに充実した日々が紡がれていくに違いない。

撮影/渡邉智裕