「どっか別の国でコントやってたんじゃない?」と疑う円熟味
実は、僕はかが屋の2人の連絡先は知らないのですが、賀屋君とは、TwitterのDMでやりとりしているので、一番古いやりとりを見返してみました。
僕とかが屋の2人は2018年のキングオブコントの準決勝で、初めて会って話をしたようです。正直その時の記憶はありません。というのも、その準決勝で、かが屋もかもめんたるも敗退しているので、ショックで記憶がないんだと思われます。
で、同じ年の暮れにやった劇団かもめんたるの公演に、賀屋君を招待したところ、「相方も誘っていいですか?」と言われ、かが屋の2人で見にきてくれたんです。
新型コロナもないころですから、公演後2人が楽屋に来てくれました。2人は満面の笑みで、開口一番「めちゃくちゃ面白かったです!! なんですかあれ!」と興奮した顔を見せてくれました。
僕は「ああ、やっぱりこの2人は純粋に面白いものが好きで、自分たちもそれがやりたくて、しゃかりきに頑張ってるやつらなんだ! だからあんな素晴らしいコントができるんだ!」と、勝手にすがすがしい気持ちになったのを鮮明に覚えています。
かが屋はその後、すぐキングオブコントの決勝に進んで、若手コント師の先頭を走るような活躍をしますが、いったん活動休止をしてしまいます。晴れ晴れと雲ひとつないように見えた彼らのサクセスロードに、突然暗雲が立ちこめた瞬間だったのではないでしょうか。
「かが屋」のネタは台本の流れに無理がないのも特徴です。これは、コントにありがちな「笑いのために登場人物の生理を無視した展開」が排除されている結果です。2人は実際にネタをやりながら「登場人物として気持ち悪い」と感じる箇所がないように細心の注意を払いながら作っているといいます。
登場人物の心情ファーストのコント作りが行われているわけです。それが2人のコントの肝である「日常の中にある人間ドラマ」を、成り立たせている理由です。
そのようなコントを作るのに人生経験が必須なのは想像に難くありません。雨降って地固まる。一見、不幸な「活動休止」が、見事に復活を遂げた「かが屋」の生み出すコントの糧になっていないわけがありません。
雨の日を経験し、再びキングオブコント決勝の舞台に戻ってきた2人。彼らが晴れの舞台で奏でるコントがどんな光りを放つのか、楽しみでなりません。