「もはやBPO案件ですよ。実際、電話メールなどで、問題放送を指摘する連絡が多数、届いているようですよ」
スポーツ紙放送担当記者がそう打ち上げるのは、テレビ朝日のコメンテーターの“誤報”に関する動きだ。BPO(放送倫理・番組向上機構)には、批判の声が寄せられているという深刻さ。やらかしたのは、テレビ朝日の社員コメンテーターである。
玉川徹氏「3つの過ち」
安倍晋三元首相の国葬の翌日、『羽鳥慎一モーニングショー』で、玉川徹氏が、菅義偉前首相の弔辞に対し「国葬の政治的意図」という見方を示した際の“玉川発言”が炎上を続けている。
前出・スポーツ紙放送担当記者は
「玉川さんは、3つの過ちを犯した。罪深い」
3つの過ちとされる失言をあらためて振り返る。
《僕は演出側の人間としてテレビのディレクターをやって来ましたから、それはそういうふうに作りますよ。政治的意図がにおわないように制作者としては考えますよ。当然、これ、電通が入っていますからね》
放送の翌日、玉川氏は、電通が関わっていなかったことを謝罪。白旗を上げた。
「電通というのはテレビ局にとって最も大切で敏感な部分。何の根拠もなくそこに責任をなすり付けた発言で、テレビ朝日内部でも、玉川批判の声がささやかれています」
電通の名前を、誤報的に出したことが、1つ目の罪。そこには2つ目の罪も含まれているという。
「そもそも“玉川発言”は、東京五輪で元電通幹部が逮捕されたことで、世間の電通イメージが悪化しているという空気を読み、それに便乗しようとしたもの。電通=悪、という刷り込みをさらに無責任に拡大流布しようとしたことはあまりにも質が悪い。フェイクニュースならぬフェイクコメントですよ」
電通の悪イメージの固定化に、まぎれもなく“玉川発言”が加担した。
さらに3つ目の罪に話を進める。
「テレビの制作者が、政治的な意図をにおわせないように制作しているということ。テレビ朝日はその昔、民主党政権が成立する際に自ら偏向報道をしたと当時の報道局長が明らかにしたことがあり、“椿事件”として大問題になりました。玉川さんの指摘はまさに、テレ朝内部の体質を裏付けるものです。
他局の報道局スタッフは、『自分のところでやっていることを、放送業界全体のことのように言うのはどうかと思いますよ』とあきれていましたけどね」
電通のイメージを失墜させ、テレビ業界全体の制作者のイメージに泥を塗った“玉川発言”。罪は拭えないばかりか、鎮火の様子もまだ見えない。
〈取材・文/薮入うらら〉