キツネは「噛めば噛むほどコクがある」
狩りをして野菜を育て、水を引いて薪を割る。居住中の山小屋の隣に、将来住むための小屋も1人で建築中。アウトドアが好きだったとはいえ、技術力や順応力の高さに驚かされるばかりだ。
「順応力は、どうなんでしょう? 僕には東京の生活が合わなかったのかも。山にいるときのほうが楽しいというのは、確実にありますね。昨日は栗を拾って茹でたんですけど、そのときに調べたり人に聞いたりして、“塩茹でで30分が、いちばん美味しいタイミングなんだ”などと新しいことを知れますから」
狩猟で仕留めた獣だけでなく、山では多くの命をいただいていると感謝する。
「これまで自分で仕留めた鹿や猪のほか、罠猟を行う猟師の方の立ち会いのもとで、アナグマやキツネを刺したこともあります。僕は何でも食べますね。キツネは淡泊で脂身は少ないんですが、噛めば噛むほどコクがあって、ジャーキーみたいに味を凝縮した感じが口に広がります。タヌキはロードキル(道路上で起こる野生動物の死亡事故)で死んだものを食べることがあるのですが、狩ったものと違い、血抜きがされていないので美味しくはないですね」
山小屋の周辺に生息する蛇や昆虫を食べることも。
「食べられなかったものはないかな。蛇は美味しいですよ。蝉も食べてみましたが、日常的には食べないかも」
山での生活を始めてからは、感動の連続だと続ける。
「獣や昆虫、山菜の食べ方ひとつとっても“実際はこうなっているんだ”と知ることがすごく面白いんです。山はそういうものにあふれているんですよね。東京の日常の中では、感動することってあまりなかったので、知識が増えていくたびに、感動できることの地平線みたいなものが広がっていく感じがします」