あの日一体何があったのか
検察などによると、関口被告は、トー横キッズやホームレスに炊き出しをする「歌舞伎町卍會」という任意団体(現在は解散)の元メンバーだった。また、共犯者は関口被告とは「兄弟」と呼び合う仲。また、氏家さんはトー横に出入りしていた。暴行に加わったA、目撃者となった少年B、少年Cもトー横で知り合った。のちに暴行を加わる木更津グループのDとは、関口被告は犯行当日に知り合った。
「(検察側は冒頭陳述で、共犯者は『卍會』の元を作ったとされていたが)共犯者と『卍會』は無関係です。また、事件当時、関口はメンバーではなかった」(卍會関係者)
21年11月27日午前5時すぎ、Aと少年Bが歌舞伎町内で、Aのトラブル相手でもあった氏家さんを見つけ、確保した。氏家さんが助けを求めたため、Aは関口被告に連絡した。Dと氏家さんとの間で金銭トラブルを抱えていた。そのため、Dは氏家さんを探しており、つながりのあったAに協力を求めていた。
「氏家さんは『このままでは何があるかわからないから、助けてほしい』と関口被告に話していました。しかし、関口被告はこの時点では断っていました」(証人尋問での少年Bの証言)
少年らは氏家さんを歌舞伎町内のAの自宅マンションへ連れていく。そのマンションのエントランスで、Aの部屋にいた共犯者も加わった。
「氏家さんはエントランスで『ここから逃げたい』と言っていました。しかし、逃したら僕が彼らから何をされるのかわからないので逃さないようにしていました。氏家さんはマンションの管理人にも警察への通報を依頼していました。管理人は何もしませんでした」(少年Bの証言)
共犯者らは、マンション北側にある駐車場に移動した。そこで共犯者が氏家さんのお腹や腰付近を蹴った。その後、共犯者は関口被告に電話。関口被告は「今から行くわ。兄弟(と位置付けている共犯者)が動いているし、行かないわけにはいかない」と話した。
さらに、花道通りにある『アパ下』(現在は閉鎖されている)と呼ばれる雑居ビルの地下2階のトイレがある個室へ移動した。そこで合流した関口被告は、「助けたい」と考えていたという。しかし、兄弟と呼び合っていた共犯者の手前、助けることはできなかった。
「(関口被告は)『何やってるんだよ』と優しい口調で声をかけていました。この時点では暴行もせず、氏家さんに怒っていませんでした」(同)
『アパ下』では、関口被告は氏家さんに暴行を加えていない。さらに場所を変える。区役所通りにある雑居ビル『星座館ビル』の屋上へ向かった。
「移動中、氏家さんは『俺、殺されるかもしれない。そしたらお前ら、捕まるぞ』と言っていました」(同)
8時ごろ、『星座館ビル』の屋上に到着。氏家さんが再び正座させられた。正面に共犯者。関口被告は近くにいた。Aは氏家さんの背後にいた。そこで関口被告も暴行に加わった。