前出のタワーレコードの田之上さんは、シティポップには、外国人を惹きつける要素があると言う。

世界の音楽ジャンルに“city pop”が加わる日も近い!?

「シティポップは、ロックなど海外の音楽に影響を受けながらも、凝りに凝った独特なコード進行、緻密なアレンジと16ビートが特徴でした。だから外国人にとっても聴きやすかったんだと思います。

 人気の広がりにより、世界中の若い人たちは、クラブなどでもシティポップの曲がかかり踊ることも増え、グルーブ感にハマったのだと思われます」

松原みきのデビュー曲『真夜中のドア〜StayWithMe』('79年)
松原みきのデビュー曲『真夜中のドア〜StayWithMe』('79年)
【写真】Z世代に大ウケ!80年代に一世を風靡した“シティポップ”ジャケットの数々

 一方、スージーさんは、Z世代をさらに惹きつけたのは、サウンドにあると言う。

「Z世代はデジタルネイティブ。つまり、音楽もパソコンなどで作ったものを多く聴いてきたりと、最初からデジタルに触れる環境で育ってきました。アナログで作られたシティポップの生楽器を中心としたバンドサウンドは、聴いたことのないものだったので新鮮に感じたんだと思います」

 また、先述のように、アナログレコード人気の再燃が、後押しをしたと話す。

「スノッブなおっさんだけが昔を懐かしむためにと思ってたら、若い子もレコードなどアナログに流れていますね。デジタル配信された音源をイヤホンで聴いていた子たちが、レコードプレーヤーやアンプもそろえてスピーカーで聴くようになってる。

 やっぱり、スピーカーから音が出て空気を震わす感覚というのは、生理的に気持ちの良いことなんですよ。それもシティポップのような昔の楽曲こそ、アナログで聴きたくなるんだと思います」(スージーさん、以下同)

タワーレコード渋谷店のアナログレコード売り場の様子
タワーレコード渋谷店のアナログレコード売り場の様子

 現在、Suchmosなどに代表されるシティポップに影響を受けながら、新しいサウンド作りをしている『ネオ・シティポップ』と呼ばれる若手のバンド群が出現している。

 聴いてみると、どのバンドのサウンドも聴きやすくグルーブ感もあり楽しい。

「もしかしたら、今後スポティファイなどの世界中の音楽ストリーミングサービスに『city pop』というジャンルが誕生するかもしれない」

 日本生まれの音楽が世界に羽ばたく。だとしたら、なかなか楽しみじゃないだろうか。

教えてくれたのは、スージー鈴木さん
音楽評論家、ラジオパーソナリティー、小説家。近著に桑田佳祐の歌詞の世界に迫った『桑田佳祐論』(新潮新書)が。

取材・文/小泉カツミ