【糖尿病の薬】薬の効きすぎで低血糖状態に
20歳以上の5~6人に1人が糖尿病とその予備群だといわれている。薬をのんでいる人も当然多い。
「これまでの糖尿病治療といえば高血糖にしないことを最優先にして、薬の処方や生活改善指導を行ってきました。血糖値を適正に下げることはもちろん大事ですが、最近では、下げすぎもよくないことがわかってきました」
と、糖尿病の専門医である岡田洋右先生が教えてくれた。
血糖値の下げすぎは危険
岡田先生は、糖質オフなど血糖値を下げることばかりに関心が集中しがちな風潮に疑問を投げかける。
「血糖値は低ければいいというものではありません。血糖値の下がりすぎによる『低血糖』が脳卒中や心筋梗塞、認知症のリスクを高めてしまうことがわかってきたのです」(岡田先生、以下同)
低血糖になると発汗や手足の震え、ふらつき、動悸などの症状が出る。重症化すると意識障害を起こすことも。
「放置すれば死に至ることすらある危険な低血糖ですが、薬のせいで起きることが近年、問題視されています」
低血糖を起こす薬を避ける
「薬というのは同じ種類や量をのんでいても、加齢により効きすぎる場合があります。おまけに、低血糖の初期症状は高齢になるほど気づきにくいので注意が必要です」
70代の女性で、スルホニル尿素薬を服用、血糖コントロールは良好だったが、最近ぼうっとしていることが多く、問いかけにも反応が鈍いので家族は認知症を疑ったという。
かかりつけ医の紹介で岡田先生の病院を受診したところ「血糖値が32mg/dlと重い低血糖で意識障害を起こしていました。低血糖の治療を行った結果、女性の意識ははっきりとし、会話も普通にできるようになりました」
その後は処方薬も低血糖を起こしにくい薬に切り替えたので低血糖を起こすこともなく、血糖も良好に管理できているという。
「『低血糖で認知症みたいな症状が出るとは』とご家族も驚かれていました」
もし自分や家族が糖尿病の薬をのんでいて、ふらつきや動悸といった低血糖の症状に心当たりがあるなら、今すぐ薬の種類を確かめたい。
注意すべきは、スルホニル尿素薬(SU薬)とインスリン注射薬だ。SU薬は糖尿病薬のなかでは最古参で効果が高いが、食事を抜いたり体調が悪い日などは、特にシニアは薬が効きすぎる場合があるので専門医たちは注意を促している。
「古い治療方針のままSU薬を漫然と処方している先生もなかにはいますので、低血糖が心配なら主治医に薬について相談してみてください」
☆低血糖が疑われるなら、この薬は要注意!☆
・スルホニル尿素薬(SU薬)
・インスリン注射薬
SU薬やインスリン注射薬は食事が不規則だったりすると効きすぎて低血糖のおそれあり。いまはDPP-4阻害薬やGLP-1製剤といった低血糖を起こしにくい「インクレチン関連薬」が出ている。
教えてくれたのは
産業医科大学医学部第1内科学講座臨床教授・糖尿病専門医。