ユニクロ、アマゾン超えるも公式発表はほぼなし

 ここまでは実店舗を構えず、急成長してきたのがシーイン。日本が世界に誇るアパレルブランドといえば、シーインと同じく“低価格衣料”を販売する『ユニクロ』だ。展開するファーストリテイリング社の'22年8月期連結の売り上げは2兆3,011億円。

「シーインは、'22年秋に世界売上高が2兆8,000億円に達したと“いわれて”います。日本のメディアは、こぞって『ユニクロ超え』と報じました」

 さらに10月22日に、冒頭にあるように南氏が訪れた日本で初めての期間限定店をオープンさせ、大行列で話題を集めた場所が『ユニクロ心斎橋店』の跡地だったため、よりユニクロ超えという“新旧交代”の印象を抱かせた。

シーインが跡地に出店した心斎橋店と同様に大規模店舗のユニクロ(吉祥寺店)
シーインが跡地に出店した心斎橋店と同様に大規模店舗のユニクロ(吉祥寺店)
【写真】『SHEIN』(シーイン)実店舗、雑に並べられた洋服たち

 また、超えたのはユニクロだけではない。シーインは昨年5月に最もダウンロードされたECアプリとして、『Amazon』を抜きトップに。

 ほとんどの販促・告知をTikTokやインスタグラムといった利用者に若者が多いSNSのみに集中させ、シェアを伸ばしたと“いわれている”シーイン。売り上げの多くはアメリカの若年層だそうだが、世界で2兆8,000億円も売れているとあって、シーインアプリの商品ページには、英語に日本語、スペイン語、アラビア語と多種多様の言語でレビューが投稿されており、1,000件を超えるレビューが投稿されるような人気商品も珍しくない。

「ブランド設立から、あっという間にここまでの世界売上高に到達したと“いわれている”シーインの成長のスピードは素晴らしいものでありますし、低価格帯のアパレルブランドにとって脅威であることは間違いない」

 ここまで数字の部分を、“いわれている”と強調していたのにはわけがある。ここ最近、シーインについては国内外で報じられている内容をまとめると以下のようなものだ。

●許仰天(クリス・シュー)氏が'08年に設立(当初はウエディング事業で、シーインは'12年ブランド開始)。
●'18年に資金を調達した際の企業価値は約3600億円だったが、現在は約14兆円に。
●'22年秋に、世界売上高が2兆8000億円に。
●商品の企画から販売までのスピードは3日程度。

「シーインはほとんど公式発表している情報がありません。上場していないので、売上高も公表していません。評価額なども含め、これらの情報は資金調達における調査会社やベンチャーキャピタルによるもの、またその関係者やスポークスマン的な人が話した、もしくは本当かウソかわからない“自称・取材をした人”によるものになります。日本のメディアはそれを翻訳して伝えています」

 当然、多額の資金調達を達成しているため、売上高はかなり多いのだろうが、もろもろの数字は“真偽不明”ということだ。