心の中にヒーローを苦しくても大逆転!

 葬儀の日、花に囲まれた蔵之介さんの写真はやはり笑顔だった。棺の中の彼もまた、おだやかな微笑みに包まれていた。

 家族も周囲の人たちも、蔵之介さんとの生前の会話をいくつも思い出す。

 そんな中でも忘れられないのが「ヒーロー」について蔵之介さんが語った内容だ。

 蔵之介さんは初めてのYouTubeでの収益9000円を、ウルトラマン基金に募金した。なぜ……?

「僕がYouTubeで活動する中で、白血病の5歳のお子さんを持つ青木佑太さんと知り合ったんです。青木さんのお子さんはウルトラマンが大好きでね。だんだん病気が重くなって、おしっこが出なくなってきたときに、佑太さんがウルトラマンを病室に呼んだんです。

 すると息子さんはとても喜んで、おしっこも出たそうです。ヒーローってすごいですよね。心だけでなく、身体の機能まで改善する力がある。不可能を可能にするんだよね。僕も似たような経験をしたことがあるから、今後も病気の子たちに希望を与えてくれるといいな、という願いを込めてウルトラマン基金に募金をしたんです」(蔵之介さん)

 実は、著書『いつか、未来で』というタイトルも、『仮面ライダー電王』のセリフから蔵之介さんがつけたものだ。ヒーローは未来という時間を希望に変えてくれる存在なのだ。

 最後に、こんな蔵之介さんの言葉を紹介する。

「僕からひとつアドバイスをしておきます。みなさん、心の中にヒーローをつくってください。本当に苦しいとき、精神的につらいときには、苦しくても逆転するヒーローの姿を思い出して。そうしたら元気になれると思うよ」

 そして、蔵之介さんはこう続けた。

「今、僕にできることを、生きている限り探し続ける」

 この言葉を胸に、私たちも心にヒーローを抱きながら生きていきたい。

YouTuber・にゅーいんさん著書

『いつか、未来で 白血病ユーチューバーが伝えたいこと』(にゅーいん著、主婦と生活社刊、1705円)※画像クリックでAmazonの販売ページへ移動します。
【写真】大学の入学式の前日、スーツ姿のにゅーいんさん

 5歳で白血病を発症し、7歳で余命宣告を受けたユーチューバーによる逆境を明るく生き抜く感動のドキュメント。家族のインタビュー、対談も収録。

<取材・文/三輪 泉>