海外でも受けた日本の焼きいも
現在、コンビニやドラッグストアでも焼きいも機を設置する店舗が増加中。
「コンビニの冬の看板商品といえば、おでんと肉まんでしたが、顧客には少々飽きられており、近年、売り上げは頭打ち状態でした」
そこで新しい看板商品を探していたところに、焼きいもブームが到来した。
「注文された商品を容器に入れる手間がかかるおでんと比べると、焼きいもは店員の負担も少なめ。冬の看板商品を探していたコンビニ各社にとって焼きいもは、スーパーと同様にメリットが多い商品でした。
またドラッグストアでは、イオン系列のウエルシアが焼きいもの店頭販売をスタート。現在は食品を強化している店舗のみの取り扱いですが、非常に売れているので、郊外のドラッグストアなどで今後、どんどん広まっていくのではないかと思います」
実は日本の焼きいもは、シンガポールなど東南アジア各国でも大人気となっている。その火付け役となったのが、『ドン・キホーテ』のアジア向け店舗『ドンドンドンキ』。
「『ドンドンドンキ』はジャパンブランドの専門店としてアジアで店舗を展開。握り寿司やかつ丼などの日本食の他、日本産の青果などを販売。'17年のアジア進出時にシンガポールの店舗で焼きいもの店頭販売にも取り組んだところ、爆発的な人気となりました」
そもそも『ドン・キホーテ』は日本でも約10年前から本格的に焼きいもの店頭販売を開始。スーパーでの焼きいも販売が一気に広まった牽引役となっていた。そこで、ドン・キホーテなどを運営するPPIHの広報に話を伺った。
「東京の一部店舗だけで行っていた焼きいも販売を広げるきっかけとなったのが、東日本大震災。『茨城県のさつまいもの売り先がなく困っている』という話を聞き、販売店舗を大幅に増やして低価格で販売をしたところ、多くのお客様に認知していただけるようになりました」(PPIH広報、以下同)
価格は、店舗や使用している品種によって若干の違いはあるが、「紅はるか」の場合は1本214円(税込み)(※1)。2021年の国内のドン・キホーテの年間売り上げが、焼きいもだけで累計20億7000万円を突破したというから、その人気はすさまじい(※2)。では、東南アジアで日本の焼きいもを売ろうと思ったきっかけは?
「焼きいもは沖縄の店舗でも売れていたことから、年中暑い東南アジアでも売れるのでは、と考えたことが最初のきっかけです。そこで、シンガポール店の店長に試食してもらったところ、『驚くほどおいしい!』との感想が返ってきて、これはやはりある程度の需要が見込めるのでは、と販売に踏み切りました」
結果、予想をはるかに超える大ヒットとなったわけだが、そこまで受けた要因は?
「海外産のさつまいもにはない、強い甘みが人気の理由となっているようです。また、ねっとりした食感のさつまいもは海外では珍しいため、その目新しさも受けた要因の1つでしょうね」
日本国内同様、甘みとねっとりした食感がヒットの要因に。石橋さんは今のブームをこう分析する。
「当たり前の話ですが、おいしくないものは売れないし、ブームにもなりません。焼きいもに関しては、機械の性能アップとさつまいもの品種改良によって、おいしくなったから売れるようになり、その結果、機械メーカーとさつまいもの生産農家双方で、『もっとおいしいものを作ろう』という機運が高まった。それで改良がますます進むという好循環が起こっています」
この好循環により、さらにおいしい焼きいもが登場するかも。ブームはまだまだ続きそうだ。
(※1)店舗によって取り扱い品種・価格は異なる場合があります
(※2)2021年1月から12月 PPIH(国内)の全数値
〈取材・文/中西美紀〉