意外なありがた迷惑も
ショッピングモールの婦人服売り場で働く由香さん(30代・仮名)はまた違った「ありがた迷惑な客」に遭遇すると話す。
「試着した後、畳んで戻す人ですね。二度手間になるのでそのままの状態で置いておくか、気を使ってくださるならレジに持ってきてください」(由香さん、以下同)
ほかにも同じ建物で働く人からはこんな声を聞くという。
「清掃担当のスタッフがコボしているのはトイレットペーパーの三角折りでしょうか。これは“掃除が終了しました”という合図なのですが、使用後のマナーだと勘違いしている人がいる。汚れた手で必要以上にペーパーを触ると紙も汚れるし、ウイルスなどの感染源になってしまいます。三角折りはしないでください」
意外な職種の人もありがた迷惑な客のエピソードを明かす。まず占い師の久遠さん(仮名)。
「タロットや占星術の内容を話してくる方ですね。自分の鑑定結果は総合的に判断してお伝えするので私はこれは地味に困っていたりします」
デイサービスで働いている良子さん(30代・仮名)が困っているのは利用者同士の物々交換。
普段のお礼に、とお菓子や雑貨などちょっとしたものをほかの利用者やスタッフに渡す人が少なくない。
「もらったほうはお返しをしなきゃいけないとプレッシャーに感じる人もいますし、お返しをもらったらさらにお返し……と終わらない。中には自分から一方的に渡しておいて“お返しもしない失礼な人だ”と怒る人もいるんです」(良子さん、以下同)
そのため、良子さんの働く施設では物のやりとりは全面禁止になったという。他にも「ヘルパーさんに申し訳ない」と介助を断ったり、床に落としたものを自分で拾おうとする高齢者もいるとか。
「何かあってからのほうが怖いです。私たちがやるのでそのあたりはおとなしくしていただきたいと思っております」
ちょっとした気遣いがむしろ裏目に出ることがある。サービスを提供する側はその道のプロなのだから素直に受けることも顧客としては大切なことなのだ。
『立つ鳥跡を濁さず』ではなく、『小さな親切大きなお世話』になっていないか、自分の行動を顧みることが、いちばんの気遣いになっているのではないだろうか。