「実体験を交えながら、現場での心構えを指導されていました。印象に残っているのは“きちんとふざけなさい”。そして“やりたいことをやって、たくさん恥をかきなさい。人生短いんだから、やりたいことをやったと言える人生を送ってほしい”と語っていましたね」(望月准教授)
学生との触れ合いは、渡辺さんにも刺激的だったようだ。
大好きだったカキフライ
「マネージャーさんは“(授業を)とても楽しみにしているんです”と話していました。渡辺さんは劇団で貢献度の高いベテランにもかかわらず決して偉ぶらず、誰とでも仲よく家族的に接してくれる方でした。寄り添ってくれる渡辺さんの言葉に、背中を押してもらえた学生も多かったと思います」(望月准教授)
渡辺さんが元気をもらっていたのは学生だけではなかったようで、世田谷区内の中華料理店では、渡辺さん考案のメニューがあるほど。
「砧スタジオが近いこともあって、若いころはよく撮影終わりに来てくれました。カケゴハン(中華丼)とロースライスをミックスした裏メニュー『ロースカケゴハン』が大好きで、“これを食べすぎて太っちゃったよ”と言われたのが印象に残っています」(店主)
家族で常連だったという懐石料理店には、今年の敬老の日に訪れたばかりだった。
「郁恵さんのお母さんを含めたみなさんで懐石料理を楽しまれていましたよ。以前より痩せてはいましたが、顔色もよく元気そうだったので、訃報は信じられません……。いろいろな料理をお出ししましたが、“ここのおにぎりがいちばん美味しい。また食べにくるね”と褒めてくれました」(四季膳 ほしや店主)
食事管理を行っていた榊原だったが、ときには夫の好物を購入して帰ることも。
「今年3月に郁恵さんが1人で来店され、帰り際に“主人がここのカキフライが好きだから”とお土産を買われていました。“マカベさんのカキフライを買ったわよ”と渡辺さんに電話をすると、“でかした”と言われたと、郁恵さんは笑っていましたね」(キッチンマカベのスタッフ)
多くの愛を受け、与え続けた渡辺さん。天国からも家族や学生たちを温かく見守っていることだろう─。