冬に増えるといわれる“お尻トラブル”。特に女性は「便秘」や「出産経験」から、慢性化しがち。「悪化しても人に言えず、何十年も我慢しているケースも多いです」というのは、痔の専門医・野垣岳志先生。介護を想定して痔の手術に踏み切る人も少なくない時代、恥ずかしがらずに今、お尻の話をオープンに話そう!
「冬になると腸活や便秘の本が売れる」といわれるが、その真偽について、「事実でしょう」と答えるのは、野垣クリニック院長の野垣岳志先生。
「夏と違い、秋から冬にかけて水分の摂取量が減ります。すると肌だけでなく、体内も乾燥しやすくなり、便が出にくい状態につながります」(野垣先生、以下同)
便秘が原因で、お尻のトラブルを引き起こすケースも多い。そのひとつが“痔(じ)”だ。冬は寒さで血行が滞り、また外出せずに座りっぱなしの状態も痔を引き起こしやすい。
「痔の中でも、便秘が原因となり発症するのが、“内痔核”と“切れ痔”です。肛門の内側にいぼ状の腫れができるものを内痔核、外側にできるものを外痔核といいます」
さらに、肛門の出口付近の皮膚が切れる“切れ痔”。硬く太くなった便が肛門を通過することで、物理的に切れ痔が生じる。
一方で、内痔核は多くの人が潜在的に持っているものだ。
「内痔核は病気ではなく、ちゃんと機能があるといわれています。肛門から便が漏れないよう、クッションのような役割を果たしているんです。ですが、便秘により排便の際にいきむことで内痔核が育ってしまったり、疲労やストレスで大きくなったりすることもあります」
痔は、人間特有の症状。直立して二足歩行を行うことで、臓器が重力で下がり、肛門に負担をかけてしまうために発症する。
肛門に違和感をおぼえた時点ですぐに受診すればいいのだが、そうしない人も多い。そこには、「恥ずかしい」という以外の理由もある。
「内痔核には、発症しても痛くないという特徴があります。違和感はあっても痛みがないから受診しないという人は多い」
中には、ゴルフボール大の内痔核を抱えながらも、普通に生活している人もいるというから驚きだ。
そしてもうひとつ、手術に対するイメージの悪さが、受診を妨げる。
「以前は、下半身麻酔をして手術を行い、2週間入院もざらでした。しかし今は、ほとんどが『硬化療法』での治療となり、注射を打つだけなので5分ほどで終わります。日帰りで済み、翌日には快適な状態となります」
トイレの苦しみが楽しみに変わった!
内痔核に痛みはなくとも他に弊害はないのだろうか?
「お尻をいくら拭いても、汚れを拭ききれないと悩んでいる人がいます。内痔核が脱出していると、便の汁が流れ出てしまうんです。そういう患者さんが治療後に、『トイレットペーパーの消費量が劇的に減りました!』と喜びの報告をくれることもあります」
そんな症状を抱えながらも何十年も我慢し、50代60代となりようやく受診する人もいる。なかには、80代になって重い腰を上げる女性もいるそうだが、そこにはこの年代特有の理由が……。
「介護を受けるのに備えて、お尻をキレイにしておきたいんですね。汚い状態でヘルパーさんに拭いてもらうのが申し訳ないと」
肛門は人に見せないどころか自分で目にすることも少ない箇所だけに、異常に気づきにくいが、違和感があるのなら受診してみるべき。
「治療で改善した患者さんからは、“トイレの苦しみが楽しみに変わった”という声も」
まずはリストをチェック!
お尻トラブルCheck List
1つでも当てはまる人は、受診で改善する可能性あり!
・排便後、お尻を何回も拭いてしまう
・排便時、便が残っている感じがありスッキリしない
・肛門を触るとブヨブヨしているなど腫れを感じる
・気づかないうちに下着に便や血がついている
・出産後、肛門に違和感がある