ネタ全体が魔法にかけられたように洗練されて見える
2人の漫才は、浜田くんまでおバカキャラだと成り立たない構造になっています。お客さんの思考の何歩か先を進む浜田くんがツッコんでいる。
そこにお客さんの思考が追いつくような順序になっていると僕は感じています。そんなお客さんの先を進む浜田くんが結局さらに先を進む永見くんの手のひらの上で踊らされる。それが彼らの真骨頂だと僕は思います。
そして、このカベポスターを単なる小難しいネタをするだけのコンビにはさせていないのが、永見くんの大喜利力でしょう。
やっぱりお笑いですから笑えないといけません。お笑いのネタは笑えないとカッコ悪いし、粋じゃないんです。永見くんの繰り出す、さまざまな題材の中に出てくるボケがピカイチなんです。だから、ネタ全体が魔法にかけられたように洗練されて見えます。
そして彼らが、あの落ち着いた関西弁でするやりとりが、彼らのネタをとても良い意味で「漫才」というおもしろいお話の範疇にとどめていることも忘れてはいけません。
カベポスターは、永見くんがその大喜利力をもって、ネタの構造から面白くしようとしている姿勢が感じられます。おそらく今、他の芸人がああいう頭を使うネタをやろうとしても、彼らの背中を見るのもなかなか難しいのではないでしょうか? 彼らはそれほど独走状態だと思います。
ここまでのネタ作りの道のりは茨の道のりだったに違いありません。
しかし、観客を信じ、自分たちのネタの発想を信じ、形にしてきた漫才は完成し、今はすでに黄金のウイニングロードを歩いているように僕には見えます。素晴らしいタイミングでM-1の決勝に上がったと思います。天晴です!
岩崎う大○1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中