寄席芸人・山田が今、誕生しつつある
そんな山田のお笑い感性を鈍らせなかった背景にあるのが、桂宮治や春風亭昇也との交流だ。
演芸関係者の話。
「山田は以前、NHKラジオで長年、レギュラー番組『日曜バラエティー』を持っていた。その際、桂宮治、春風亭昇也らをはじめとした若手を重用していたんです。そのころから、飲み会を開いては、丁々発止のやり取りをして“若手の今”を吸収していた。飲み会にはプロレスラーも来たりしていましたよ。山田は本当に面倒見がよくて、東京の若手芸人に慕われていますからね」
宮治や昇也らとの交流から山田が今、自分の将来として描くようになったのは“寄席芸人・山田邦子”という姿だ。
演芸評論家が明かす。
「山田は今、春風亭昇太が会長を務める公益社団法人落語芸術協会の“準会員扱い”なんです。若手芸人より先に、同協会の理事の桂竹丸と交流があり、竹丸が引き込んだ形です。寄席に出たい、と山田が申し出て、それが理事会で議論されたことがあります。結果、将来、協会員になることを視野に寄席に出演してもらえれば、ということになり、時々寄席に出演しています。
12月も、浅草演芸ホールで出て、大ウケしていましたよ。生の舞台に出ていることで、お笑いの勘は鈍っていない。そんなふうに思いましたね。大げさに聞こえるかもしれませんが、寄席芸人・山田が今、誕生しつつある段階で、自分のファンでもない客の前でネタを披露する寄席が、高座が、山田の新たな一面を引き出しているということです」
寄席に出ることで、多くの芸に触れることができる強み。芸の良し悪しを見極める目が自然とできる強みが、山田を芸人としてたくましくさせている。そんな山田をポスト上沼としてM-1の審査員として選んだ番組関係者のセンスは、案外鋭いと言える。
決勝戦での的確なコメント次第で、山田がさらに注目を集める可能性が出て来た。要注目だ。
〈取材・文/薮入うらら〉