皇太子さま(当時)との婚約が正式に内定したのは'93年1月。雅子さまは29歳だった。
「婚約会見にカナリア色のワンピースで臨まれた際は、“なぜスーツをお召しにならないのか”と、少し残念に思いました。大学院生時代に秋篠宮さまと結婚された紀子さまに対し、雅子さまは皇室で初めて社会に出てからのご結婚。新しい風を吹かせてくださるだろうと期待していたのですが、従来のロイヤルファッションにならっているように見えてしまったのです」
雅子さまを象徴する洋服
同年の6月9日に皇太子妃となられてからは、洋装や着物、公務や日常の場面に応じたお召し物選びを楽しまれるようになった。
「紀子さまは、パステルカラーを基調とし、ビーズやリボンなどで装飾されたかわいらしい雰囲気のお召し物が多かったのですが、雅子さまは、肩パッドの入った洋服やダブルボタンのついたジャケットなど、当時流行ったトレンディドラマに描かれる“働く女性”を体現されていました。ビビットカラーを選び、ジャケットにはパンツやタイトスカートを合わせることが多く、装飾を控えたシンプルなデザインがよくお似合いでした」
飾りが簡素である代わりに首周りで遊ぶのが“雅子さま流”。
「外交官時代から、さまざまな色や柄のスカーフ使いがお上手でした。皇室入り後は、『園遊会』などの華やかな場面では大きなボウタイのついたブラウスを着用されたり、2連のパールネックレスを選ばれたり。もちろん、スカーフをお召しになることもありました」
数あるコーディネートの中でも、特に佐藤さんの記憶に残っているのは、
「初めて海外を訪問された'94年11月、サウジアラビアにある『赤い砂漠』での緑のロングジャケットです。デザインしたのは伊藤和枝さんですが、イスラム教徒にとって聖なる色とされている緑を選ばれたのは、“皇室外交”という夢を抱いて結婚された雅子さまを象徴するエピソードです。'90年代の雅子さまは、実にさまざまなデザインのファッションを楽しんでいらっしゃいました」