SNSでドラマを楽しむ新たな形が普及
3位はこの秋の話題作『silent』(フジテレビ系 木曜22時)。聴覚を失った想(目黒蓮)と彼を思うヒロインの紬(川口春奈)、そして周りの人々の切ない恋物語に日本中が胸を焦がした。「物語が深く、毎回涙を流さずには見られません」(新潟県・32歳)、「回が変わると視点も変わって、いろんな登場人物に感情移入できるのが新鮮」(神奈川県・21歳)。
テンプレ化されたキュン要素ではなく、登場人物ひとりひとりの心情を丁寧に描き、恋愛ドラマの原点に立ち返ったことが成功の要因とカトリーヌさんは分析するが……。
「とはいえ、その分リスクもあり、丁寧に描くゆえに展開が遅いという弱点が後半に見えてしまったのは残念。ただ恋愛ドラマにおいてはヒロインや周りの女優さんが大切なんだということを再認識させてくれました。
川口春奈さんの泣き顔の説得力やひと言もセリフを発しないのに手に取るように感情が伝わってくる夏帆さんの表情など、女優さんの演技が際立つとラブストーリーはより輝きますよね」(カトリーヌさん)
意外な作品が4位に飛び込み、これにはカトリーヌさんも驚いたようだ。
「強いですねぇ、『孤独のグルメ』。こんなにサステナブルなドラマはほかにないですよ(笑)。これは10位の『家政夫のミタゾノ』にも言えるのですが、型があるというのはものすごく強い。
テレ朝だったら、『ミタゾノ』のように強烈なキャラを持った主人公と周りを囲むおなじみのメンバー。そこに悪者らしい悪者が現れ、ピンチを経てのスカッとする結末という型。
テレ東だったら『孤独のグルメ』のような手を替え品を替えてのグルメドラマという型。フォーマットが決まっているから、あとは素材を変えるだけでいい。で、うまくハマればシリーズ化という流れができあがっているんです」(カトリーヌさん)
昔ながらの代表格ともいえる朝ドラからは2作がランクイン。5位の『カムカムエヴリバディ』は上白石萌音、深津絵里、川栄李奈で祖母、母、娘三代のヒロインをバトンタッチしていくという新機軸が好評を得た。
一方で、9位の『ちむどんどん』は“#反省会”がネットのトレンドに入るなど、逆の意味で盛り上がった珍しい朝ドラで、「ツッコむことがいつしか楽しみになっていました。これって術中にハマってたの?」(東京都・33歳)という人も意外に多かったのだろう。
SNSとの親和性ということでいえば、7位の『マイファミリー』だろう。次々と起こる新たな誘拐事件と増殖していく謎に視聴者は振り回されっぱなしだった。
「いわゆる考察系ドラマの本年ナンバーワンです。考察系ドラマってほぼほぼ最終回にはがっかりするような結果が待っているんですけど(笑)、そこに至るまでにいかに視聴者を振り回すかという意味では『マイファミリー』は素晴らしかったと思います」(カトリーヌさん)
自分なりの謎解きを披露したり、他人の考えを「なるほどねぇ……」と楽しむ考察系ドラマは、まさにSNSの普及で生まれた連ドラならではの新ジャンル。原作もののミステリーのようにしっかりと謎を構築していない分ツッコみどころも多いが、それすらも楽しめてしまうのが魅力でもある。
『ちむどんどん』の反省会もそうだが、’22年はドラマをネタにSNSで盛り上がるという視聴スタイルが確立した年でもあったのかもしれない。