詐欺師なのに 光を放って目立ちすぎ!

 そして、がっかりドラマとしてもうひとつ挙げるのであれば、

「『クロサギ』(金曜22時~TBS系)ですね」

 詐欺被害によって家族を失った黒崎高志郎(平野紫耀/King & Prince)が選んだ生き方は、詐欺師を騙す詐欺師“クロサギ”。そのターゲットは、人をだまして金銭を奪う詐欺師“シロサギ”だ。

「『クロサギ』は話題作りが上手かったと思うんです。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演した名役者たちが、レギュラーやゲストで次々に送り込まれていましたよね」

 (『鎌倉殿の13人』で)三浦義村を演じた山本耕史、北条時政を演じた坂東彌十郎。第2話ゲストに阿野全成を演じた新納慎也&北条時政の娘・きくを演じた八木莉可子。第3話ゲストに大江広元を演じた栗原英雄らが出演した。“キャスト泥棒”感を感じなくもない。

『鎌倉殿の13人』頼みでしたね。それは悪いことではないと思うんです。やっぱり好きな人は“おや?”と思って『クロサギ』も見ちゃいますよね。山本耕史さんは白石陽一を演じていて、こちらでも食えないタイプの男。詐欺のスキーム以上に、そっちに目が行ってしまって。私自身、この秋は『鎌倉殿の13人』と『Silent』に関する取材依頼がとても多くて、外からくる熱、うねりをすごく感じました。普段ドラマを見ない人ですら、『鎌倉殿の13人』の話をしていましたから。そんな中で、至らないドラマは余計に目立ってしまう部分はあったとは思います」

 また平野紫耀が演じた黒崎についても、

「すごくキレイな顔をされているがゆえに、とにかく目立つ。詐欺師には向いてないと思うんですよ。光を放ちすぎ(笑)。いろんなスーツを着たり、いろんな役柄を演じていたりしたのはわかるんですが、ちょっと着せ替えごっこに見えしまい、リアリティに欠けた。また“これってすぐ捕まる案件じゃん”と思えるケースも散見されて。ドラマとしての深みはあんまりなかったなという気がします」

 また、ヒロイン・吉川氷柱を演じている黒島結菜もぱっとしなかった印象。

11月中旬、『クロサギ』ロケ中の平野紫耀と黒島結菜
11月中旬、『クロサギ』ロケ中の平野紫耀と黒島結菜
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「『ちむどんどん』からの悲劇というか(笑)。彼女の持っているものが生かされていなかったかな、という気がします。私、黒島さんはすごく好きな女優で。NHKの『アシガール』('17年)ではとてもいい演技をしていました。可愛らしかったし、うまかった。その後のテレビ東京の『死役所』('19年)でも。素朴だけど小生意気、でも女性から嫌われない……はずの黒島さんが『ちむどんどん』ではボロクソ言われましたからね。またTBSは朝ドラのヒロインをやった女優を、すぐに引っ張る傾向はありますよね。『まれ』('15年)の土屋太鳳さんを『下町ロケット』('15年)に出すとか。黒島さんに関しては『クロサギ』でもしっくりこなかった。次の作品に期待するって言うしかないですね、エールを送りつつ」

 もうすぐ'23年。新たな年を迎えてほどなく、1月期のドラマがスタートする。もちろん良作への期待はやむわけはなく、心からのエールをお送りしております!

<プロフィール>                                                                                                         吉田潮さん  ライター、コラムニスト。主要なドラマはすべて視聴。『週刊新潮』での「TVふうーん録」など連載多数