野口五郎の鼻くそネタがコンプライアンスNG
「野口五郎さんの鼻くそネタが今のテレビはコンプライアンス的に差し障りがあるという。じゃあ自分ができるものまねはひとつもなくなってしまう(笑)。だからといって今から芸風を変えるのも変な話だし、コロッケ流のものまねをゴリ押しするのもちょっと違ってきたのかな、というのは肌で感じていたところでした。何でもそうですけど、やはり惜しまれつつ辞めたほうがいい。引き際が良くないとカッコ悪いな、というのが正直な気持ちとしてありました」
今後『ものまねグランプリ』には審査員として携わり、この先「大きなものまね番組でパフォーマンスをすることはない」と宣言。かわりに「どんどん新しいことをやっていけそう」と、舞台やコンサート、SNSに主戦場を移した。
'22年の秋には芸能生活40周年記念公演も無事完走。コロナ禍で2年先延ばしになっていたが、ステージでは新ネタも続々披露し、待ちかねていたファンの期待に応えてみせた。北島三郎や五木ひろしといったおなじみの鉄板ネタから、香川照之やBTSといった最新ネタまで、今やものまねネタの総数500以上。ファンはもちろん、ものまね相手からも愛され、五木ひろし御本人から直々にゲストとしてコンサートに招かれたこともある。
「だからもう誰も止める人がいないんですよね(笑)。北島さんや五木さんが“もういいよ”と許してくださっている。他の歌手の方や御本人のファンにしても、“あのおふたりがそう言うのならもうしょうがない”となっちゃって(笑)」
年明けは新歌舞伎座での座長公演に始まり、ものまねコンサートや明治座公演の出演も控える。多忙な日々が続くが、「こんな時代だからこそ笑顔になれるエンタメを提供したい。やっぱり僕の場所はそこしかないから」と全力で舞台に向かう。その原動力にひとつの思いがあるという。
「“あの時のコロッケのものまねさぁ”と家族みんなで振り返るアルバムの一ページになれたら、という願いがあって。ファンの方から“昔おばあちゃんとコロッケの公演を見に行って一緒に大笑いしたのが大切な思い出になっています”というお手紙をいただき、僕も人の役に立てたんだと感動したことがありました。みんなの笑顔と会話が増えるキーワードになりたい、そのために頑張っている気がします」
今年芸歴42年。若手が次々台頭するなか、今なおトップを走り続ける。はたしてそのゴールはどこにあるのだろう。
「実は70代になったら始めようと思っていることがあって。でも詳しくはまだ秘密(笑)」
ヒントは?と尋ねると─。
「ある目的があって、全国をぷらっと回ろうと考えています。キーワードは“ひとり”。70代になったとき、“それがやりたかったのね!”と答え合わせをしてもらえたら(笑)」
とはいえ現在62歳で、“答え合わせ”まで10年をきっている。ものまねレジェンドの第2章は始まったばかりで、「この先もずっと走り続けていくつもり!」と勢いを増す。
「一区切りついた今、ようやく次に行けるという思いがあって。ここから先は、目いっぱい手広くいろいろなことをやっていきたい。“この次はどんなことをしたらお客様に喜んでいただけるだろう?”と考えていると、やりたいことが次々湧いてきて、気づいたら朝になっていた、なんてこともしょっちゅう。だから毎日楽しいですね。もうずっとわくわくしっぱなしです(笑)」
<取材・文/小野寺悦子>