「句友が亡くなるのは本当にさびしい」
この時期、私はジャーナリストの矢崎泰久さんが立ち上げた、ミニコミ誌の草分け的存在である『話の特集』のメンバーになり、よくお酒を飲んでいた。『話の特集』は、こちらも谷川俊太郎さん、寺山修司さんといったユニークな文化人が多数登場する気鋭の雑誌だったから、私は『話の特集』で十分楽しかった。
実際、私はこの雑誌にとてもお世話になった。
先日、敗血症のため78歳で亡くなった、矢吹申彦さんも『話の特集』の主要メンバーの一人。彼は人気イラストレーターで装丁家だったけど、俳号・矢吹猿人(さるんど)という俳人としての顔も持ち合わせていた。よくご一緒した。句友が亡くなるのは本当にさびしい。
私が俳句を始めたのは、20代半ばのころ。俳人・中村汀女先生が主宰する『テレビ句会』に出演したことがきっかけだった。「なかなか面白いな」と思い始めていたころ、『話の特集』の矢崎さんが音頭をとって「毎回ダラダラと飲んでいるだけじゃなくて、頭を使った知的な遊びでもしようじゃないか」──というわけで句会を開催するようになった。
和田誠さん、山下雄三さん、中山千夏さん、下重暁子さん、山藤章二さん、小沢昭一さん、野坂昭如さん、藤田敏雄さん……いろいろな方々と俳句をきっかけに交流するようになり、気がつくと、仲よしの岸田今日子ちゃん、(吉行)和子っぺも加わっていた(笑)。
句会では、誰がその俳句を作ったのか無記名で披講される。選ばれて初めて「それは私です」と名乗る。肩書や年齢なんて関係ない。民主的だから楽しかった。いい趣味を見つけたと、私はどんどんハマっていった。
最近は、ねじめ正一さんを頼りに、定期的にWEB句会に参加。参加者はLINEで自分の俳句を送る……んだけど、どうにも私はLINEが苦手。私だけFAXでねじめさんに迷惑をかけている。
(構成/我妻弘崇)