氏家氏とメリー氏の青写真通り、櫻井はキャスターとして成功した。司会ぶりも好評を博している。半面、俳優としての評価が定まらないのは、演技の仕事をする時間が少ないからである気がしてならない。キャスターと司会で忙しいからなのか、ドラマは2年に1回、映画は3・4年に1回しか出ていない。これでは芝居の勘を掴むのが難しいはず。
また、どんなに大物でも売れっ子でも舞台の仕事を大切にする。演技力を高められるからだ。舞台は編集で誤魔化すことが出来ず、やり直しもきかないので、稽古を繰り返す。おのずと演技力が磨かれる。だが、多忙な日々を送る櫻井は2006年に『ビューティフル・ゲーム』に主演して以来、舞台がない。
櫻井翔が目指すべき俳優像
大御所の映画監督で大阪芸大教授も務めた中島貞夫氏(88)に名優の条件を教えてもらったことがある。名優には2通りある。
1つめは自分自身の個性や魅力を役に投影させるタイプ。故・高倉健さん(享年83)が代表格だ。良い意味で、どんな役を演じても健さんだった。2つ目はどんな役にも成り切るタイプ。劇団出身者に多い。現在だと堺雅人(49)が筆頭格である。
櫻井は健さんと同じく、本人に清潔感や知性などの魅力があるので、1つめの名優を目指すべきではないだろうか。極端な話、櫻井に極悪人役などは無理だろう。似合わないはずだ。
新ドラマ『大病院占拠』も櫻井のキャラを生かした役柄になりそうだ。若き警部補に扮し、謎の大病院立てこもり犯たちと戦う。新たな代表作と呼ばれるようになるか。
取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。