マップ作成で判明! いちばん多く使われているのは、あの場所だった
巷にあふれる『いらすとや』のイラストは、どこでどのように使われているのか。歩いて街を探索し、使用例を見つけると、グーグルマップ上にその情報を記録する――。そんな『いらすとやマッピング』の作成に励む男性もいる。
ブロガーの三浦靖雄さんが『いらすとや』に注目し始めたのは、2015年のころだ。
「当時は『水の中で眠る会社員たち』のような、“どこで使うんだよ”というイラストを見ておもしろがっていました。それから3年もたつと、街中で『いらすとや』を見かける頻度が急速に増えてきた。
その様子を見て“『いらすとや』はインフラになるのではないか”と思ったんです。若い世代がスマホのない時代を想像できないように、“『いらすとや』ができる前は、イラストがほしいときにはどうしていたの?”と、いつかそう思える日が来る……。そこで『いらすとや』が広まっていく過程を観測し、視覚化したいと思って、2018年に『いらすとやマッピング』の作成を始めました」(三浦さん、以下同)
それ以来、三浦さんは休日になるたび、都内の知らない街を訪ね歩いてきた。
「始めて1~2年のころは、街中で『いらすとや』のイラスト1つを見つけるのに30分かかっていました。5時間探して、やっと10個。それが今では15分に1つの割合で見つかるようになりましたね。駅に降りて街の顔を見たら、ここで『いらすとや』が何個見つかるのか、大体わかります」
いちばん見つけやすいのは商業地区。反対に、住宅街やオフィス街には少ない。ここ数年の傾向として、警察や官公庁など公的機関での使用が目立つほか、「コロナ禍で爆発的に増えた印象がある」と三浦さんは言う。
こうしてグーグルマップ上に記録された『いらすとや』の使用例の数は、都内を中心に1142(2023年1月4日時点)。三浦さんの探索は続き、今なおマップを更新し続けている。
「マップへの登録が1000個になった時点で集計したところ、いちばん多く使われていたのは不動産屋。次が公園、3位は薬局でした。不動産屋には、もともとPOP広告の文化があるからではないかと思っています。
2位の公園では“ゴミを捨てないでください”“煙草を吸わないでください”等々、利用規約とともに『いらすとや』が使用されています。不特定多数が利用するためなのか、公園にはお願い事が多いんです。
僕は“お詫びシリーズ”と呼んでいますが、『いらすとや』自体、誰かに頭を下げているイラストの種類がいちばん多い。お店や医療機関などに代わって、イラストが頭を下げてくれているんです。世の中には、利用者にお願いをしなければいけないことがあまりに多くて、『いらすとや』がこれほど活躍しているのではないかと思っています」
AIまで登場した『いらすとや』はこの先、どのような広がりを見せるのか。日本一有名なフリー素材サイトの行方に今後も注目したい。