「介護しなくてもいい」親との境界線をひく

「男尊女卑の時代を生きてきた親世代は、娘が介護をするのは当たり前、一方、幼いころから否定的メッセージを多く受け取っている娘は、期待に応えようとします。鳥居さんもそうですが、特に毒母に育てられた娘は、しっかり者で優しく、自己犠牲が得意。憎しみを感じているなら、介護疲れやストレスが限界を超えたサイン。無理は禁物です」

 まずは、自分が毒親の被害に遭っていることに気づくことが大切だとか。

「モラハラ、パワハラ上司の被害に遭っているのと同じ。自分に問題があるのではなく、相手の問題です。自分を責めないでください」

 そして、親と自分との境界線をひくことが第一歩。

「愚痴を聞くのは1時間だけ、面会は月に2回だけ、など具体的な数字で区切りましょう。境界線をひくと、毒母に育てられた娘は罪悪感を持ちやすいですが、自分は悪くないのです」

 そして責任、感情、お金にも境界線が必要。

「どこまで自分が責任を持つのか、負担するのか、決めておきましょう。毒母育ちは自分で決められない傾向がありますが、自分で決めて、“NO”を言うべきところは、キッパリ言って大丈夫」

 毒親育ちの考え方を変えるには時間もかかるという。自信がなければ心理カウンセラーなど専門家の手を借りるのもひとつの方法だ。

毒親に滅私奉公すれば自分の家族にも影響します。毒親の介護中に夫が病気になった、子どもが不登校になったという話はよく聞きますが、今は介護をしないという選択肢もある。自分の健康と家族に目を向け、バランスのよい介護を目指してほしいです」

教えてくれたのは体験者・鳥居りんこさん

鳥居りんこさん
鳥居りんこさん

 エッセイスト。介護・教育アドバイザー。自分の経験をもとに幅広い分野で発信。10年に及ぶ毒母介護の経験から介護関係の著書多数。

心理カウンセラー・守帰朋子さん

守帰朋子さん
守帰朋子さん

 母娘問題研究家。自身の毒親介護経験を相談に活かす。著書に『毒親対応「罪悪感」を減らす5つの習慣』がある。

<取材・文/ますみかん>