九州での興味深い現象を受け、2003年から全国的に「受験キャンペーン」を展開。それ以来、12月から2月にかけては1年の中で最も売り上げが伸びる時季となった。
しかし、皆さんはお気づきだろうか。『キットカット』は「きっと勝つ」とのキャッチコピーを、これまで宣伝等で一度たりとも使用したことがないのだ。
「“きっと勝つ”という言葉は九州のお客様が作り上げてくださった言葉で、私たちが考えたものではありません。それを広告で勝手に使うことは許されないと思っています。お客様をリスペクトする意味でも、最低限のルールは守りたいんです」
このルールはキャンペーン開始当初から、歴代の『キットカット』ブランドマネージャーのあいだで「絶対に守るべき鉄則」として引き継がれている。
「きっと勝つ」の代わりとして「キット、サクラサクよ。」という、受験生にそっと寄り添う縁起の良いメッセージとともに、2003年から受験生を応援するパートナーとしての活動を開始している。
現在は全国約5000か所の郵便局で『キットメール』を販売。遠方に住む友人へ、または祖父母から孫へと、受験生への励ましのメッセージとともに『キットカット』を送ることができる商品だ。受験シーズンが終わると、ネスレのお客様相談室には「元気づけられました!」とお礼の便りが寄せられることもあるそうだ。
世界中で販売されている『キットカット』だが、お守りとしての付加価値を持つ国は日本だけ。受験生をやさしく見守る日本の『キットカット』は、51年目の新たな歴史を刻み始める。
(取材・文/植木淳子)