菅野さんが見た“孤独死”の現場
●集合住宅の上階から次第に下りられなくなり……(Aさん・60代)
高度経済成長期に建てられたエレベーターのない団地に家族で暮らしていたがその後、離婚し、子どもは独立。自宅は団地の上階にあり、足のケガをきっかけにほとんど出歩かなくなっていた。ケンカが原因で子どもと連絡を絶っていた間にひとり亡くなっていた。
●一家で孤立し熱中症で命を落とす(Bさん・50代)
精神疾患を抱え、両親と一緒に暮らしていたものの、父親は他界し母親は病気で施設へ。市の登録上は単身世帯ではなかったために支援が遅れ、女性は熱中症で孤独死。自宅には両親が娘のために貯めた多額の貯金が残されていた。
●高級マンションでまさかの孤独死(Cさん・60代)
3LDKの高級マンションに数匹の犬や猫と暮らし、唯一の肉親である妹とは20年以上音信不通。周囲と遮断されたマンション内で死後半年以上たってから遺体が発見される。ペットは餓死。特殊清掃を行った後も死臭はなかなか消えなかった。
菅野久美子さん●ノンフィクション作家。1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社の編集者を経て2005年よりフリーライターに。孤独死や男女の性に関する記事を多数執筆。著書に『特殊清掃の現場をたどる 超孤独死社会』など。
(取材・文/熊谷あづさ)