被害男性が被害届を出さなかった理由

「借りるときは事前に準備した借用書を渡し、ちょっとずつ返済もしている。数千円程度だが、借りたまま連絡を断つと詐欺だとバレるし、少額でも返せば“返す気があるのかな”と思わせることができるかもしれないから」(前出の捜査関係者)

 犯行が発覚したのは、何度も大金をおろす被害男性に銀行が「騙されていませんか?」と声をかけたから。被害男性はようやく我に帰り、警察に相談したという。

 西村容疑者は看護師資格を取得するため大学進学時に奨学金を貸与されており、カードローンの借金もあった。しかし、騙し取った金は「すべて吉田容疑者に渡しました」と供述し、返済に充てた形跡はなかった。

 両容疑者の出会いは約6年前。当時、吉田容疑者が経営していた会社のアルバイト募集に西村容疑者が申し込んだのがきっかけ。どういった経緯かは不明だが、吉田容疑者から株式売買のノウハウを教わったという。

 やがて資産運用を任されるようになったのか、西村容疑者の供述によると株取引で大きな損失を出してしまい、吉田容疑者から「どうしてくれるんや」と迫られた。

 そのとき、「実はこういう手があるんやぞ」と詐欺を指南されたという。

 両容疑者は最初に逮捕された当時、八尾市内の近いマンションで別々に部屋を借りていた。西村容疑者の部屋には複数の高齢男性が出入りする様子があった。金を借りる際は自室やビジネスホテル、コンビニなどで男性と会っていたことがわかっている。

 あらためて取材すると、吉田容疑者宅マンションでも西村容疑者がたびたび部屋に出入りする姿が目撃されていた。