歌を歌っている時間が何より幸せ

シンシアの店にはイギリスのアンティーク家具が並ぶ。今はなき横浜の老舗バー「マジック」をイメージし、横浜らしさを醸している
シンシアの店にはイギリスのアンティーク家具が並ぶ。今はなき横浜の老舗バー「マジック」をイメージし、横浜らしさを醸している
【写真】横浜らしさを醸し出すシンシアのお店のアンティーク家具

「早いもので、店をオープンして今年で5年。娘もちょくちょく顔を出してくれますね。私も当初は緊張しっぱなしだったけど、今ではお客さまと一緒に飲んで歌って、誰よりも早くベロベロになっています(笑)」

 スナックの切り盛りと並行して、自身もシンガーとしての活動も続ける。ホームは横浜・関内のライブハウスで、昔なじみのファンも多く足を運ぶ。

「お客さまは古くからの知り合いが大半で、もう応援団みたいな感じ(笑)。だから地元で歌っているときがいちばん楽しいし、今は歌を歌っている時間が何より幸せです。

 私も今年60歳の大きな節目を迎えます。いろいろなことがあったけど、今は“これからが本番!”という気持ち。ここから先は、自分のやりたいことを、思い切りやっていこうと思っていて……」

 19歳のとき横浜で歌を歌い始め、“関内の歌姫”と名を馳せた。しかし娘が同じ道を歩み始めたとき、自身は裏方にまわろうと決めた。

「10代で家出し、20代で離婚して夫や家族にも頼れなかった。私たちには支えになるものが何もなく、娘と二人三脚で走り続けるしかなかった。

 小学生のときブラックミュージックと出会い、虜になり、いつしか私自身も歌を歌うようになっていました。歌は大好きだったけど、母子2人きりで生きていくうえで、裏方にまわることは切羽詰まっての決断でした」(次回に続く)

<取材・文/小野寺悦子>