歌会始が終わると、別室で両陛下と選者、預選者、披講団が歓談する場が設けられる。

「私が詠んだ《月蝕の のちの望月 くまもなき 地上にわれが 友垣がゐる》という歌について、両陛下が“私たちも望遠鏡を用意して、御所の庭で見ました”と反応してくださり、フランクな応対が楽しいひとときとなりました」

来歴を踏まえられた雅子さまの和歌

 国民とのあたたかい交流を大切にされる陛下のお気持ちは、和歌にも表れている。

《コロナ禍に友と楽器を奏でうる喜び語る生徒らの笑み》

 '21年10月、和歌山県で行われた第36回国民文化祭に両陛下がオンラインで出席された際、吹奏楽を演奏した高校生3人との交流を取り上げられたものだ。

「陛下ご自身も学習院輔仁会音楽部OBオーケストラの一員として、パート仲間と仲よく練習に励まれ、本番を終えられた喜びと安堵感を覚えられたに違いないと思います。そうしたご体験と重ね合わせて心情を詠われたのでしょう。陛下とはオンラインでご連絡を続けておりますが、やはり対面で会いたいという思いは、陛下もお持ちなのではないでしょうか」

 そう話すのは、陛下と学習院初等科から大学までを共にしたご学友で、評論家の乃万暢敏さん。現在も親交があり、陛下と連絡をとるたびに《雅子や愛子からもくれぐれもよろしくと申しています》とのおことばが添えられるという。

 雅子さまが披露されたのは、ご結婚30周年を迎える今年らしい和歌だった。

1月2日、コロナ禍以降3年ぶりに実施された新年一般参賀に臨まれた天皇・皇后両陛下(撮影/JMPA)
1月2日、コロナ禍以降3年ぶりに実施された新年一般参賀に臨まれた天皇・皇后両陛下(撮影/JMPA)
【独自写真】愛子さま、扇子を持ちながらキレキレのダンスを披露

《皇室に君と歩みし半生を見守りくれし親しき友ら》

“皇室に君と歩みし半生”という歌い出しは、ご自身の来歴を踏まえた率直な表現です。慣れない環境で起伏も多かったはずの日々を支えてくれた友……。今回、歌会始で披露された作品の中で、友という存在のかけがえのなさがもっともよく表れた作品だと感じました。自分の思いを飾ることなく述べるという和歌の大切な領域がよく生きている御歌だな、と素直に感動し、うれしくなりました」(三枝さん)

 皇室入りした後、雅子さまが歩まれた平坦とは言いがたい道には、どんなときでも変わらず見守り続けてくれた“友”の姿があったのだろう。

雅子さまは5年ほど前、中学時代からの旧友として知られる女性にマグネットを贈られたことがあるとか。そのマグネットには“親友とわかち合う喜びは増し、試練は和らぐ”という意味の英文が記されていたといい、今回の和歌にも通じる思いが感じられます」(宮内庁関係者)