歯磨きやうがいのケアでリスク減
「まず、何よりも重要なのが歯磨きやうがい薬などによるこまめな口腔ケアです。肺や胃腸の入り口でもある口内には、1000億個以上のさまざまな菌がいます。適度な湿度と温度が保たれている口内は、細菌にとっては理想の環境。
口腔ケアをしなければ細菌はどんどん増える一方で、その数が多いほど誤嚥で肺炎を発症するリスクも高まります。口内を常に清潔に保っておくことは、歯の健康のためだけではなく、肺炎予防の点でもとても効果的です」
定期的な歯科診療も、口腔ケアのために必要不可欠だ。
「年配になるほど、虫歯を放置したままの方も多いようです。虫歯の箇所だけでなく、普段のケアではなかなか取れない歯垢なども菌の温床となってしまいがち。
虫歯を治療するだけでなく、歯科医師や歯科衛生士に口内の状態を確認してもらい、適切な口腔ケアの方法をプロに指導してもらうことも大切です」
ほかにも、普段の心がけひとつでできることは多い。
「こまめにお茶や水を飲んで口内の菌を胃に洗い流すことも一定の効果があると思います。ただし、サラサラとした液体はむせやすいので、口にする際は気をつけましょう。
食事の際には、ひと口で食べる量を少なくして、ゆっくりとよく噛んで食べることを心がけるなど、誤嚥を防ぐ工夫も必要ですね」
誤嚥自体の根本的な予防はなかなか難しいが、飲み込む力や口まわりの筋力を意識的に鍛えておくことも有効だ。
「早口言葉や、舌を突き出して細かく動かす運動をするなど、口まわりを意識的に動かすことは嚥下機能の向上につながります。ほかにも、ただ歌ったり、笑ったり、おしゃべりをするだけでも、喉の筋力アップが期待できるでしょう。
また、口の中には、耳下腺・顎下腺・舌下腺と呼ばれる、唾液の出やすいポイントがあります。それらの唾液腺を食事の前などにやさしくマッサージすると、唾液の分泌を促すことができ、誤嚥予防にも効果的ですよ」
嚥下機能は40代から衰え始める。誤嚥を予防し、おいしく楽しく食べる習慣を早めに身につけておきたい。
(取材・文/吉信 武)