番組のリスナーは「運命共同体」
「これまで多くの番組をやらせていただいたんですが、それって“=長寿番組がない”ってことなんですよ。アナウンサーなので、ある程度のことはできますが、そこからもう1段階上げて、長寿番組にすることはできていなかったんです。若いころやっていた音楽番組が4年ぐらい、テリー伊藤さんと一緒にやっていた番組が4年半、あとは1人で午前中の番組をやっていたのが5年ぐらいとか、全体的に短くて。
何か理由があったり、経費削減でなんとか社内のアナウンサーでやりたいという番組も多いんですけど、なかなかうまくいかず……。そんな中、現在のニッポン放送の社長がまだ編成局長だったときに、“嫌だったら断って”と、早朝の時間帯を頼まれて、“そこじゃないかって思ってたんですよ。ぜひやらせていただきたいです”と、『あさぼらけ』が始まりました」
経費削減のため、関わっているスタッフはディレクターとミキサーと上柳の3人だけ。
「昼の番組は、放送作家やアシスタントディレクター、サブ作家、サブディレクターがいたりと、スタッフが多い。それを3人でやっていかなければいけないことに、やりがいを感じています。ラジオって、関わる人数が少ないほうがおもしろいんじゃないかって昼の番組をやったときに思っていたんですよ。
台本があって、読み合わせして……というのではなく、もっと自由にやりたいなと。図らずもそれができることになり、いざ始まったら、“朝4時半から始まるけど、深夜放送をやっているんだな”ということに気づいたんです。やっぱり、特殊な時間ですからね。“運命共同体”って言ってくださったリスナーがいるんですけど、“こんな時間に聴いてるなんて”という結束力や、不思議な連帯感があるんです。
リスナーにお会いして話をする機会があると、みなさん親戚みたいな感じで話しかけてくれるし、身内意識みたいなものを持って接していただいているように感じて、すごくうれしいです。『あさぼらけ』を担当して、もう1度、ラジオがすごくおもしろいものだと思えました」
『あさぼらけ』に欠かせないのが、やはりリスナーからのメッセージだ。
「みなさんのメールをきっかけに僕のトークが始まることも多いです。たかが1時間半なのですが、かなりメールを読む量が多い番組だと思うんですよ。それは全部僕がメールに目を通して、選んでいるからかもしれません。偉そうですけど、リスナーの人生を紹介して、“そういう人って俺だけじゃないんだな”と思ってもらえるような番組になればいいなと思っています」
自身が病を患ったことで、上柳自身もその思いを体感した。