事務所独立から復活をなしたハングリー精神

 僕らのようなまじめな芸人はそれをうのみにし、しっかりとネタ時間を守っていたのですが、ファーストラウンドが終了した段階で、森田くんが僕のもとに駆け寄り「○○のコンビはネタ4分超えてました! だから強制終了はありませんよ!」と教えてくれました。これには驚きました。

 なんと森田くんはお付きの作家さんに全組のネタ尺をストップウオッチで計らせていたのでした。人生を懸けた戦いの場ではこういう精神が必要なのだと感動すら覚えました。自分が率先してネタ尺をオーバーするのではなく、全組のネタ尺を計っておく、なんとも抜け目のないノーリスクな戦い方。

 そして、なにより衝撃だったのはそんな大事な情報を興奮しながら僕に教えてくれたことでした。ただの良いやつだぁ、と感動したのを覚えています。森田くんはゴシップと風俗が大好きで下品なやつだという印象がありますが、性根はきれいなのです。

 それからさらば青春の光は、松竹芸能を辞めて個人事務所ザ・森東を立ち上げたりと自らを逆境に追い込みながらも、キングオブコント決勝常連になり、M―1グランプリでも決勝に行くなど快挙を成し遂げ続けます。この姿は一般の視聴者よりも同業者たちを驚かせたに間違いありません。同じ業界に身を置いていると、彼らの歩むいばらの道の険しさが身をもってわかります。こいつらなら何かやってくれそうだ。そう思った業界人たちが数多くいたことでしょう。

 その証拠にDMMが新しく始めた動画配信サービスのオリジナル番組『インシデンツ』では、さらば青春の光がメインを務めています。

 地上波では流せないコント番組という危険な触れ込みのさらば青春の光にピッタリなこの番組は、佐久間宣行さんやオークラさんという業界の重鎮が関わり予算もかかった超豪華な番組です。僕も参加させてもらいましたが、現場でメインを張るさらば青春の光の2人には頼もしさしかありませんでした。

 個人事務所を立ち上げ、業界ではいったん干されたといっても過言ではない状態から、見事な復活を成し遂げたさらば青春の光。もちろん地上波のテレビでも活躍中の2人ですが、数年後振り返ればこれがまだ彼らの栄光の序章に過ぎなかったと思う日が来ることを、僕は信じています。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中