「『何万人来た』とか『年商何億円です』といったアピールをしていますが、実際のところは、売り上げ以上に経費などがかかっており赤字経営が多いんです」
そうアンテナショップの経営状態を指摘するのは、まちビジネス事業家の木下斉氏。特産品を気軽に購入できる各自治体の『アンテナショップ』だが、都内では昨年から閉店が相次いでいる。東京・銀座で14年間、群馬県が展開していたアンテナショップ『ぐんまちゃん家』は昨年末で閉店。ほかにも、昨年1月に北海道美瑛町のアンテナショップ『丘のまち美瑛』、3月には『兵庫わくわく館』など閉店している。
アンテナショップの相次ぐ閉店
コロナ禍で来客が減ったことが売り上げ減少の理由に挙げられるが、木下氏はコロナ禍以前からアンテナショップの経営の危うさを提言していた。
「民間の店舗と感覚が違ってアンテナショップは『その地域のPRができればいい、商売のためだけに経営しているわけではない』というスタンスです。銀座などの家賃が高額なエリアに出店している店舗が多いのですが、1点何百円、何千円の物産品の販売ではそもそも採算が取れるとは思えません」(木下氏、以下同)
地域活性化センターによれば、都内で営業している地方自治体アンテナショップは、2022年4月1日時点で独立店舗は59店舗、商業施設などの一部に併設されている集合型店舗は8店舗あり、'21年と比べ、それぞれ3店舗、1店舗減っている。
コロナ禍前の都内のアンテナショップの年間売り上げを見ると、1億円を超えた店舗が全体の6割あったという。だが、それでも採算は取れていなかったのではと木下氏は推測する。
「不動産調査会社のデータをもとに換算すると、立地がいい場所で30坪の店を出した場合、家賃は月あたり450万円〜、年間で5400万円に達します。イベントスペースや事務所なども確保するとなると、さらに高額になります。しかも、初期には内装等の設備投資が発生し、水道光熱費や人件費などもかかってきます」
現在営業しているアンテナショップは主に1990年代にオープンしたものが多く、ちょうどバブル崩壊後で、好立地なエリアの賃貸料も下がり、出店しやすい状況だった。また、銀座の一等地ならステータスでもある。
「地方の方でも銀座、有楽町といった場所は知っています。そうした一等地に店を出せば広く認知されるという考えがあったのでしょう」
2010年代に入ると情報番組や情報誌に取り上げられるようになり、都内にいながら小旅行気分が味わえると若い女性や中高年層を中心にブームとなった。しかし、杜撰な運営をしていたのではないかと指摘する。
「『店頭で売られている商品を見ると、地元の誰々さんがやっているからあそこの商品は置いておかないと』といった忖度も感じられます。アンテナショップに並ぶ商品は、目利きのバイヤーが取りそろえたわけではありません。常に目新しい商品があるとは思えませんし、民間ショップのような企業努力をしていたかは疑問です」